2013年新春インタビュー

日本のITは「核」と「自信」で海外と戦え MIJS対談2013年新春特集 「負けない力」(2/2 ページ)

» 2013年01月24日 08時00分 公開
[構成:國谷武史,ITmedia]
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海外への挑戦

内野 日本人は、海外で相手がそれなりの地位にある場合や、単に外国人というだけで、「考え方が違う」と委縮してしまいがちです。内山さんは、中国市場を良く知り、ストレートにぶつかっていくタイプという印象ですが、何か意識していることはありますか。

内山 「私は日本の代表だ」と考えるようにしていますね。相手との出会いはその場限りかもしれないわけです。

 中国では歳が上の人ほど、日本に対するイメージが良くありません。歴史的なイメージもありますし、親日意識が強いと国内の情勢から外れてしまうと警戒します。自分の立場を大切にしている方も多いですね。日本の製品は好きですが、政治などは難しいという具合です。そんな日本に対するイメージを持つ人に会う時、私は「中国語が話せて堂々と要求する日本人もいるんだぞ」ということを、認識してもらうように努めています。

対談

内野 日本が海外市場でなかなか勝てないのは、相手との接し方といいますか、ストレートに要求すべきところは要求するといった点が弱いのかもしれませんね。

内山 日本企業の方を中国の方に紹介する時に、中国側からは「要望を持ってきてくれ」と強く言われます。例えば、中国で日本の企業と欧米の企業が競合すると、日本側の提案書には何も書かれていません。「われわれにはこういう実績があるので、たぶんできると思います」というようなトーンですね。それが、欧米の企業の提案書にはできないことも書いてあり、「これができるから一緒にやりましょう、だから仕事ください」という具合なのです。

 日本の提案書はインパクトに欠けるので、欧米の企業に負けるのは当たり前でしょう。ですから、「負けないためにどうするか」ということを常に考えなくてはなりません。海外の企業は絶対に「負けない」という単語を使わないと思います。中国語なら「勝」、英語なら「Victory」を使うはずです。そういった意識が、日本ではビジネスリーダーを含めて全く足りていないのだと思います。

 ところで、今の日本のITは日本の中だけでサービスをしていて、ガラパゴスのようになっているのではないかと感じます。内野さんは日本のITが海外に出ていくべきだという危機感をお持ちですか。

内野 危機感というよりも、「日本人の誇り」として、すべきでしょうね。内山さんにも、中国でのビジネスにはそういう想いがあるのではないでしょうか。どこの国の人も「我が国が一番」だと思うはずです。しかし、日本はその誇りを背後に隠してしまっているように思えてなりません。もっと前面に押し出していくべきですね。

 海外から帰ってくると、「日本はいいね」と必ず思います。料理も日本が一番においしいですし(笑)。日本の良いところを前面に押し出して成功している業界もあります。しかし、IT業界は負けていると思います。日本としての「核」を持って、海外に打って出れば、相手に必ず受け入れられるはずです。それをするか、しないかだけだとも思いますし、それならやるべきでしょう。私にも日本の素晴らしいソフトウェアを世界に送り出したいという想いが強くあります。

内山 大学を卒業してこの仕事を始めたばかりの頃は、実は日本があまり好きではありませんでした。とにかく中国に行きたかったですね。ところが、中国に行って「わたしは中国人じゃない」と気付かされました。中国人になっても良いという気持ちでいたのに、中国の人たちが笑っていることを分からず、「価値観が違う」ということを痛感させられましたね。そして日本に戻ると気持ちがすっきりして、「日本のためにがんばろう」と思えるようになりました。

 ですので、今こそ日本は立ち上がるべきときだと思います。「もう一発海外で勝負してやるぞ!」と、勝つ日本にしていくために一致団結すれば、きっと実現できるはずです。

対談 「日本」という自信が負けない力になると話す内野氏(左)と内山氏
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