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» 2013年03月28日 08時00分 公開

サイボウズ流の働き方:働き方の自由化? 社畜化推進? 伝統的ワークスタイルへの挑戦 (2/2)

[野水克也,サイボウズ]
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「ウルトラワークをしたくない」場合も

 このように、全員が出社しないで自由に仕事をすることを望むかというと、必ずしもそういうわけでもありません。また、自分が希望しないだけでなく、「ウルトラワーク」で勤務することに懐疑的な人も出てきます。

 サイボウズが、ウルトラワークを試行する中で社員に取ったアンケートでも、「勤怠に対するモラルが低下しそう」「いつでもどこでも働けるほどの自由は必要ない」という意見や、「不公平感が出るのではないか」という不安が出されています。

 当たり前といえばそれまでですが、社内には成果や能力で評価されたい人もいれば、時間や態度で評価されたい人もいるということで、全員がウルトラワークのような働き方を喜んでいるわけではありません。

 社内の業務内容においても、独創性を要求される仕事や高い能力を必要とする仕事もあれば、根気や丁寧さが大切な仕事もあります。目的は優秀で多様な人材に長く働いてもらうことですから、勤勉さを評価されたい人もまた大切な人材なのです。

 理想は取りたいときに取れればいいのであって、出社した方が効率よく仕事ができるという人にまで、外で仕事をすることを強要しては意味がありません。選択できることが重要です。

 そして、ウルトラワークを必要以上に強制しない方が良いというもう一つの理由は、労働基準法との関係です。正直、労働関係の法令はウルトラワークのような勤務形態を想定して作られているわけではないので、さまざまな課題があります。

 厚生労働省が平成20年に策定したテレワーク実施のためのガイドラインである「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」でも、「次世代のワークスタイルとして普及定着していくための課題を明らかにし対策を講じていくことが求められることになろう」として、実施を推奨しながらも今後整備が必要という認識が示されています。

 サイボウズがウルトラワークの試験運用を始めた際に言われた不安の主たるものは、「評価」と「残業」面です。特に残業については、「永遠に働かされる社畜化」的な意見もネット上では見られました。

 先のガイドラインによれば、勤務時間の管理についてはこう書かれています。

「在宅勤務については、事業主が労働者の私生活にむやみに介入すべきではない自宅で勤務が行われ、労働者の勤務時間帯と日常生活時間帯が混在せざるを得ない働き方であることから、一定の場合には、労働時間を算定し難い働き方として、労働基準法第38条の2で規定する事業場外労働のみなし労働時間制を適用することができる」


 「みなし労働時間制」は、営業職や出張時など事業所の外で働く社員の労働時間について、勤務状態を把握することが難しい状況であることから、所定労働時間労働したものとみなす、という制度です。

 営業職などでは、「ノルマ達成までは帰ってくるな」というような、サービス残業が常態化している会社も世の中にはあるため、「成果物を上げるまで仕事は終わらない」的な懸念が持たれるのでしょう。在宅勤務やウルトラワークなどの事業所外で行う勤務の全てに残業がつかないのかと言えばそうではありません。

 ウルトラワークのような時間と場所にこだわらない働き方をする場合、労働基準法的な観点で見た場合に、主に次の3つの労働管理方法を選択出来ます。

  1. 時間管理制
  2. 事業場外労働のみなし労働時間制
  3. 裁量労働制

 社員の契約形態によってどれが適用になるかが決まり、管理方法もそれぞれ違います。

在宅勤務における業務時間連絡の例(震災当時、全社員が在宅勤務したときの筆者の部署)

1.時間管理制

 残業なしのDS(ライフ重視)を選択している場合や、一日5時間といった短時間労働制、およびPS(仕事重視)を選択している一部の社員に適用されます。

 事業所外労働になりますが、グループウェアやSkypeを接続しておくことで、労働状態は把握できます。ですから、みなし労働ではなく通常の時間管理制です。勤務する時間帯と業務内容は、あらかじめ上司と相談の上で決定され、勤務開始や終了はその都度申告しなければならず、また、勤務時間中は常に連絡が取れる状態であることが必要です。

2.事業場外労働のみなし労働時間制

 先のセンテンスで、厚労省のガイドラインには「事業場外労働のみなし労働時間制を適用することができる」と紹介しましたが、実はサイボウズでは、この事業所外みなし労働時間制を使っていません。理由は時間管理制のところで書いた通り、ITツールで時間管理も勤務状態も把握できるので、みなしにする必要がないからです。

 厚労省のガイドラインは、「出張時の営業社員と同様の勤務制度も使えるよ」と言っていますが、ITツールを活用することで、「内勤と全く同じ条件で在宅」も可能です。

3.裁量労働制

 労基法における裁量労働制を選択している社員に適用されます。PS制度の中で裁量労働制選択者(PS2と呼ばれます)がこれに該当します。PS2は社員の選択での申告制で、申告しない場合は裁量労働制が適用されません。本人が希望した上で、裁量労働制の要件を満たしていた場合のみ許可されます。

 労基法とサイボウズの勤務制度の整合性をとるために、若干ややこしい制度になっていますが、要するに、働き方も評価のされ方も選択できるというのがサイボウズの勤務制度の特徴かと思います。一般職、総合職のように一度選択したら、めったに変えられないものでもなく、上司の指示や業務内容によって半強制的に裁量労働契約になるわけでもありません。

 一部の職種によっては労基法の裁量労働を適用できない場合がありますが、選択の制限はかなり少ないと言えるのではないでしょうか。そもそも、より多くの人が多様なスキルを身につけて成長して長く働ける環境をというのがウルトラワーク導入の目的です。「社畜」育成のシステムと見なされれば退職者が増え、モチベーションが下がりますから、目的を達成しません。

 裁量労働も、ウルトラワークの選択も申請によって行われるもので、強制ではないことが理想ではないかと思います。


 さて、ここまで3回に渡ってサイボウズのウルトラワークを始めとする勤務制度を説明してきましたが、サイボウズのように全員がPCを使いこなし、ネットコミュニケーションを普通に行える会社はそう多くはないでしょう。

 そこで、次回は普通のITリテラシーの会社がどうやってテレワークでコミュニケーションを保っているかを他社の事例を紹介します。

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