巨人、SAPのクラウド戦略を皮肉るNetSuiteのネルソンCEOSuiteWorld 2013 Report(2/2 ページ)

» 2013年05月16日 08時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]
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 製造業向けソリューションのお披露目がSuiteWorld 2013の大きなトピックだったが、どちらかというとITやサービスの業界から顧客層が拡大してきたNetSuiteにとって、プロセスが複雑なだけに慎重に取り組まざるを得なかった分野だ。ネルソンCEOも「5年前なら製造業ソリューションはやらないと答えただろう」と振り返る。

 「われわれも製造業の市場は重要だと考え、ステップを踏みながら機能強化を図ってきた。簡単な組み立て作業を行う販売業者向けのソリューションや製造自体は海外のパートナーに委託するメーカー向けのソリューションなどを経て、いよいよ最後のステップとして、自社で100%製造する企業でも使えるソリューションに拡充できた」(ネルソン氏O)

「だれもデータベースをつくってくれとは言わない」

 ネルソン氏は、ソフトウェアの選択には「カスタマーロイヤリティー」が左右することはあまりないと考える。ソフトウェアの未来がサービス化にあるのであればなおさらだ。

 「いかに企業の課題を解決してくれるかがソフトウェアの決め手になる。製造業であれば、その業務に関する要求しかない。今年は5000人がSuiteWorldに参加してくれたが、ひとりとして“データベースをつくってくれ”と言う人はいない」とERPの巨人、SAPを皮肉る。

 「たまたまSAPのSAPPHIREカンファレンスと時期が重なっていて面白くないせいもあって、SAPのことを“口撃”しているが、彼らのクラウドのメッセージがあまりにも顧客からかけ離れたものであることに正直驚いている。わたしがもしSAPユーザーだとしたら高額な保守料金がデータベースの開発にしか使われないとしたら憤慨するだろう」とネルソン氏。

 そもそもNetSuiteのミッションは、規模の大小を問わず、起業家精神にあふれ、イノベーションによってゲームを変えようとしている企業をクラウドによって成功に導くことだとネルソン氏は言い切る。クラウドの本質的な恩恵は、効率化やコスト削減ではなく、その柔軟さや迅速さにあるからだ。

 「新しいテクノロジーとは常にそうだが、変革が進む業界の先進企業が最初に採用し、フォロワーに拡大していく。NetSuiteが先走りすぎているというのは褒め言葉だと思っているが、クラウドに関しては本来、SAPやOracleが顧客に伝えるべきことをわれわれが伝えているだけだ」とネルソン氏。

 今回のSuiteWorld 2013でもQualcommやWilliams-Sonomaのように海外現地法人の経営基盤としてNetSuiteを採用する事例が幾つか共有されたが、本社の本丸に逆輸入する企業が現れる日も近いかもしれない。

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