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» 2013年11月25日 11時30分 公開

仮想化するほど足りなくなる――はなぜ起きるのか?クラウドファースト時代の運用ベストプラクティス(2/2 ページ)

[國谷武史,ITmedia]
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性能を分かっていない

 宮原氏は、「仮想化されたサーバの中で把握しやすいものは、CPU、メモリ、ストレージ、ネットワークの4つこの中でCPUとメモリは数値化によって性能を把握しやすい。しかし、その性能の意味を理解していないエンジニアは少なくない」と語る。

 本来、仮想化とは稼働率の低い物理マシンで運用しているサーバを論理環境に集約させ、物理マシンの稼働率を高めることが目的であるはずだ。ところが、「仮想マシンのリソースが足りないかもしれない」という漠然とした不安から仮想マシンへ割り当てる物理マシンのリソースが過大になり、結局のところ物理マシン上で運用できる仮想マシンを増やすことができなくなる。

 「例えば、VMwareではリソース使用率のパーセンテージを一覧で見ることができるが、エンジニアはほとんど見ていないし、見ても意味を理解していない。エンジニアは『パーセンテージが高いこと=悪』だと考える」(宮原氏)

 仮想化によって物理マシンの台数を減らしてサーバルームをスッキリさせるはずにもかかわらず、思うように物理マシンが減らないのは、物理マシンを運用する感覚から脱却できないことが大きな理由だろう。このことはマシンの稼働環境がオンプレミスでもクラウドであっても弊害となる。特に、この感覚のままパブリッククラウドを利用してしまうと、リソースが豊富で利用料金も高いインスタンスを選択してしまいかねず、期待したコストダウン効果を得られないというジレンマに陥る。

 これに対し宮原氏は、「100%の稼働率に近づけるのが理想だが、60〜70%程度を目標に設定するのが現実的だろう。仮にリソースが急に足りなくなっても、この設定であれば5割増(30〜35%増)までは対応していける。万一の場合にも問題が無いプラスアルファのリソースをどう設定するかという感覚が大事」とアドバイスする。仮想化環境の運用では「稼働率にちょっと余裕がある」という具合が望ましいという。

 ある程度の期間にわたって仮想化環境を運用しているのであれば、過去の稼働状態のログや運用実績などから分析することによって将来におけるリソースの変化を予測でき、その予測に基づいてリソース計画を立てることも可能だろう。

 また、最近のパフォーマンス監視ツールには割り当てるリソースの増減を事前にアドバイスしたり、アラートを通知したりする機能を搭載したものもある。「プラスアルファのリソースをどう設定するかという感覚に不安があるなら、こうしたツールを活用すべき」(宮原氏)という。まずはリソース使用率の棚卸しから始めてみるのも、課題解決への一つのアプローチになるだろう。

仮想化の中身の問題

 先に触れたように今では多くの企業がシステムの仮想化に着手し、程度の差はあっても今後も仮想化環境は広がっていくとみられる。宮原氏は、既に顕在化しつつある別の課題も指摘する。

 「クラウドの普及もあり、物理環境自体を廃止するというケースも出てきた。一方でどうしても仮想化できないといった事情から取り残されるシステムもあり、今後どのように仮想化環境と統合運用していくべきかが焦点になるだろう」(宮原氏)

 極端だが運用管理面からとらえると、全てのシステムを仮想化して一元的に運用していけるのが理想だろう。実際、宮原氏のもとにも「取り残されているシステムをどう仮想化したらよいか」というユーザー企業の相談が増えているという。

 今ではプライベートやパブリックのクラウドにおける運用実績も増えつつあり、システムの移行先としてはオンプレミスも含めた選択肢が広がっている。そこでは仮想化が当然ということになるものの、今度は仮想化の中身が問題になってくる。

 「1つにはバージョンアップどうすべきか、パッチ適用をどうするとかといった問題がある。これは仮想化技術が解決してくれるものではない。バージョンアップでは例えば、ハイパーバイザーが障壁になる。VMwareの最新版のvSphere 5.5には魅力的な機能が多いものの、現状では旧バージョンのユーザーが多く、下位互換が無いために利用をためらうケースは多い。安定稼働しているものを変更するのは簡単ではないだろう」(宮原氏)

 今後増えていくとみられる仮想化環境の運用における課題の1つに、ハイパーバイザーの混在化があるという。仮想化関連技術の発達には勢いがあり、同一ベンダーでも混在運用が難しいことに加え、さらにはMicrosoftのHyper-VやKVMといった新たなプレーヤーが台頭しつつある。

 宮原氏によれば、まだハイパーバイザーをマルチベンダー化するというケースはほとんど無いものの、その可能性を検討する動きは始まっている。「例えば、クラウド事業者の中にはWindowsのシステムを『V2V(仮想環境から別の仮想環境への移行)』でHyper-Vに移行できるならコストを節約できるのではないか考えるところもある。一般企業でもLinuxサーバを多数運用しているなら、ハイパーバイザーもOSSにしてコストダウンを徹底したいと考えるだろう」

 こうした検討は将来に構築される新規システムへ反映されるかもしれない。だが、集約によって効率性を追求していく仮想化本来の目的とは間逆ともいえる。「統合する方向で来ていたものが、また部分最適化が始まり、仮想と仮想の混在による運用の複雑化が予想される。それでコストダウンできるなら、部分最適化という選択もあるのだろう」と宮原氏は語る。

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