創業時からパソコン用パッケージにこだわり続けるシステムディ田中克己の「ニッポンのIT企業」

今から30年前、私立学校向けの会計システムから事業を出発したシステムディ。パソコンの可能性を信じ、業種・業務に特化したパッケージソフトを手掛ける同社のビジネス戦略とは。

» 2014年03月11日 08時00分 公開
[田中克己(IT産業ウオッチャー),ITmedia]

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 業種・業務に特化したパッケージソフトを手掛けるシステムディの業績が順調に推移している。ターゲット市場におけるシェア・ナンバーワンを目指し、さらなる機能改善や品質向上などを図り、顧客の満足度を高めていくという同社の戦略が根底にある。

学園ソリューションが売り上げの過半数

 京都に本社を構えるシステムディは1984年、パソコン用パッケージソフト会社として事業を開始した。創業者の堂山道生会長兼社長は「汎用機やオフコンはピラミッド構造なのに対して、パソコンはフラットな産業構造になる」と期待し、黎明期のパソコンに注力する。下請けではなく、主体的なビジネスを展開できるということだろう。誰でも使えるパソコンの高性能化がどんどん進めば、市場は確実に広がるとの読みもあった。

 最初に手掛けたのは、私立学校向け会計システム。学生数3000人から5000人規模の短期大学や中学・高校、専門学校などに向けたもので、企業用の会計システムのような激しい販売競争もない。当時、汎用機やオフコンをベースにしたものはあったが、パソコン用はこれから立ち上げる有望な市場と判断した。

 1985年にこの会計システムを発売したが、実は売れなかった。「使い勝手が悪かった」(堂山会長)からだ。ところが、その後に開発した学費管理システムが好調な売れ行きで、それを導入した学校が会計システムも採用してくれるようになった。その間に、パソコンの性能アップに伴う機能強化を図り、学生数2万人、3万人に対応可能にするとともに、学費管理や成績管理、固定資産管理などを含めたトータルシステムに仕立て上げた。結果、「約1100ある大学での、当社シェアは35%になる」(堂山会長)。ちなみに、「学園ソリューション」と呼ぶ、この事業の売り上げは同社の総売り上げの約6割を占める。

 もう1つの事業の大きな柱が、総売り上げ約2割を稼ぐウェルネスソリューション事業だ。具体的な製品がウッドランド(現フューチャーアーキテクト)から買収したスイミングスクール向け会員管理システムで、フィットネスクラブやヨガ教室、ダンス教室、体育館などへと広げてきた。累計ユーザー数は2013年10月末で592になる。クラウドサービスでも提供し、新規顧客の開拓を進めている。

システムディの主要なパッケージ システムディの主要なパッケージ

公教育、公会計の新規事業

 システムディは、2016年10月期に売上高を30億円(2013年10月期は21億7100万円)、経常利益を4億円(同1億3200万円)にする中期目標の実現するため、既存事業を強化する一方で、新規事業の立ち上げを急ぐ方針を掲げる。

 新規事業の1つが、2010年から開始した公立学校向け校務支援システムだ。教職員の校務処理支援や保護者らへのメール連絡、構内や教育委員会などとの情報共有化を図るグループウェアなどからなるもので、既に400校以上に導入されている。

 実は、本格的に売れ始めたのは2013年から。県内の全高校に導入している静岡県と和歌山県の要望を聞きながら、2年の歳月をかけて機能強化を図っていたからだ。クラウドサービスを用意するなどし、宮崎県や香川県、広島県、岩手県などからも相次いで受注したという。

 もう1つは、地方自治体向け公会計システムである。連結子会社PMCから譲渡される形で、システムディが2013年1月から本格販売を開始した。2013年10月時点で約170の自治体が採用しているが、同社に追い風が吹き始めた。2013年6月の閣議で、自治体に民間の会計基準に準じた財務諸表や固定資産台帳の作成、提示を求めた「企業会計原則による公会計導入の促進と公共施設の資産管理・経営改革の重要性」が決定されたことだ。

 総務省は2014年7月までに単式簿記(家計簿方式)から複式簿記(企業会計方式)に変更する「新公会計基準」を策定する。それに伴って、自治体の導入が加速する可能性があるので、新会計基準に対応する新バージョンを8月、9月にも発表し、1700超の自治体に売り込む。その一環から、2013年4月に公会計基準の導入コンサルティングなどを提供する新公会計研究所を子会社化にした。

 同時に、ビジネスモデルを変えてきた。高い品質、豊富な機能を備えたパッケージソフトの開発、販売に力を入れることだ。以前、カスタマイズによる売り上げ増を図ったが、結果的に「その費用がかさみ、アフターケアも大変になる」(堂山会長)などし、収益率向上につながらなかった苦い経験がある。カスマイズなしの方が顧客満足度を高められる。さらに、ストック型の収益基盤を確立するクラウドサービスを強化していく計画だ。


一期一会

 堂山会長は、1984年のシステムディ設立前、京都芸術短期大学(現京都造形芸術大学)の企画室長を務めており、創設から情報関連の学科設置などにもかかわってきたという。そうした経験が、大学を始めとする教育機関の事務処理課題を解決する会計や施設管理などのシステムを手掛けるきっかけになったのだろう。

 その一方、設立時から「下請けはしない」「請負はしない」「派遣はしない」とし、パッケージソフト一本で勝負する。しかも、業界ナンバーワンを目指す。「パソコン用パッケージソフトでは、高い収益を得られないだろうから、当社の下請けになったらどうか」といった誘惑もあったが、パソコンの可能性を信じて、学校や自治体向け会計システムや、会員管理、施設管理などのシステムを次々に開発したり、事業を買収したりしてきた。

 今秋には、さらなる新規事業の立ち上げを計画する。同社のパッケージソフトやクラウドサービスを導入した学校の教職員、学生、自治体の市民、企業の会員などを対象にしたサービス提供を目論んでいる。残念ながら、その内容はまだ秘密だという。実は、保健サービス事業者向けに2010年から万歩計を使って、加入者のメタボリック改善などを図る健康管理サービスを始めている。2014年に71歳になる堂山会長は、これからどんなサービスを考えていくのだろう。

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