いかに企業は価値創出するか 北陸の地で経営者が討議IBMリーダーズ・フォーラム 2014 Spring 中部 レポート

経営者向けセミナーの地方版「IBM リーダーズ・フォーラム 2014 Spring 中部」を日本IBMが開催。地元企業の経営者たちがIT活用の事例などを紹介した。

» 2014年06月13日 15時13分 公開
[伏見学,ITmedia]

 日本IBMは6月11日、地方企業の経営者に向けたセミナーイベント「IBM リーダーズ・フォーラム 2014 Spring 中部」を石川県金沢市内のホテルで開催した。同イベントは、2012年秋にスタート。日本IBMの支社がある東北(仙台)、中部(名古屋)、関西(大阪)、西日本(福岡)エリアにおいて半年ごとに開かれているもので、同社の地方戦略を推進する取り組みの1つである。

 中部エリアはこれまで過去3回、名古屋で開催してきたが、今回初めて金沢に場所を移した。その背景として、昨年7月に中部支社が北信越地方もカバーするようになったこと、来年5月にIBMのユーザー・シンポジウムが金沢で実施されることなどがある。

3つの変化に対応できるか

 100人に迫る地場のユーザー企業の経営者を前に、オープニング講演に登壇したのは、日本IBMのマーティン・イェッター社長である。冒頭でイェッター氏は「金沢に来るのは初めてだが、来年には東京とを結ぶ新幹線が開通するので、より身近になるだろう。そのための良いきっかけ作りとなった」と開催の意義を述べた。

日本IBMのマーティン・イェッター社長 日本IBMのマーティン・イェッター社長

 本題に入り、イェッター氏はビジネスを取り巻く3つの変化について話す。3つの変化とは、データ、クラウド、(ソーシャルやモバイルに対する)エンゲージメントを指す。これらの技術トレンドは、国や地域に限定されず世界で同時に進行しており、企業、コンシューマー問わず、すべての人に影響を及ぼすものだという。

 こうした中、IBMはビッグデータやクラウドに対して多大な投資を行ってきた。ビッグデータに関しては、過去5年間で240億ドルを投じ、うち170億ドルを30社以上の企業買収のために当てている。クラウドについても、昨年に米SoftLayerを買収したことで、2015年末までにクラウド関連収益が年間70億ドルに達すると見込んでいる。一方、12億ドル以上を投資して日本を含む15カ所の新たなデータセンタを構築する計画だ。

 「このようなビジネス、テクノロジーの変化をどう利用するのか、それに向けてどのような視点を持つべきなのか。これを経営者の皆さんとともに議論していきたい」とイェッター氏は意気込んだ。

繊維業の衰退にITで抗う

 同セミナーでは、地元企業の経営者などが登壇する恒例のパネルディスカッションも行われた。「スマートな時代の新たな価値創出」をテーマに、繊維メーカーであるセーレンの川田達男会長兼社長、北陸コカ・コーラボトリングの稲垣晴彦社長、日本IBMの薮下真平取締役専務執行役員 エンタープライズ事業本部長がパネリストとして参加した。モデレーターはジャーナリストの蟹瀬誠一氏が務めた。

左から蟹瀬氏、川田氏、稲垣氏、薮下氏 左から蟹瀬氏、川田氏、稲垣氏、薮下氏

 「日本の将来は厳しい」――。こう警鐘を鳴らすのは川田氏。人口減、財政赤字、年金破たん危機、エネルギー問題など、日本を取り巻く状況は深刻だ。2007年に約512兆円だったGDP(国内総生産)は約478兆円(2013年)にまで減少した。「日本はミスリードしているという危機意識を持っている。もっと国益を考えるべき」と川田氏は指摘する。

 企業に目をやると、長引く不況によってリストラなどが断行されたことで「現場力が落ちている」と稲垣氏は話す。また、技術立国・日本の中心であった団塊の世代が引退する時期を迎えていることからも、再び立て直していかないと厳しいとみている。

 こうした中で、いかに企業は付加価値、すなわち利益を生み出していくべきか。その有効な手段がITの活用なのだという。セーレンでは、CADシステムの中に約5万着分の洋服データを入れ、バーチャル在庫として用意。消費者はこのシステムを利用して、デジタル上で試着することで、好みの色やデザイン、サイズなどを自由に選ぶことが可能である。

 「繊維業が斜陽産業となる中で、セーレンが成長しているのは、常に新たな価値創造があったからだ。それを支えているのがITなのである」(川田氏)

 現在、セーレンは製造プロセスをほぼIT化している。200台の製造機器がある現場にオペレーターはわずか3人だけ。基本的には中央のセンターからITによって管理しているそうだ。「価値観や流通のあり方など、ITが企業ビジネスを変えている。ITなくして21世紀の仕事はできない」と川田氏は言い切る。

 北陸コカ・コーラボトリングも古くからIT化を進めてきた1社だ。例えば、他社に先駆けて25年ほど前から注文データを無線で送信するなどして、業務の効率化を図ってきた。今では約2万台の自動販売機をオンライン化し、消費者がいつ、どんな商品を購入したかをリアルタイムで把握している。ここで収集したデータを分析し、商品構成などを適時検討しているそうだ。

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