新規事業創出で注目されるクラウドストーミング、利点とリスクは何かビッグデータ利活用と問題解決のいま(2/2 ページ)

» 2014年07月16日 08時00分 公開
[笹原英司ITmedia]
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クラウドストーミングに潜むオープンならではの情報リスク

 今日ではGEだけでなく、StarbucksやP&G、GAPなど様々なグローバル企業がクラウドストーミングを活用している。それらのベストプラクティスを参照しながら、いざ自分の企業で実際に導入しようとすると、様々なリスクが立ちはだかってくる。

 第1に重要なのは、クラウドストーミングを支えるプラットフォームなどICTインフラのセキュリティである。通常は企業の研究開発部門や新規事業部門が、クラウドストーミングプロジェクトのオーナーとなるケースが一般的であり、ICTインフラについては社外のクラウドサービスを期間限定で利用することが多い。

 特にビッグデータ向けのクラウドインフラではHadoopによる分散並列処理、NoSQLによる非構造化データのリアルタイム処理など、様々な新技術が利用されている。それに対応したセキュリティ機能も次々と登場している。クラウドサービスプロバイダーと折衝する企業のプロジェクトオーナーは、この辺のトレンドも捕捉しておく必要がある。

 第2に企業のリスク管理の観点から問題になるのは、知的財産やプライバシー、機密保持に関わる情報のアクセスやコントロールである。企業のビジネスモデルは、特許権や著作権など様々な知的財産権の上に成り立っており、ビジネスを巡る戦略的提携や協調を進めるにつれて、非公開のドキュメント類やデータが蓄積されていく。

 また、プロジェクト参加者がアクセスする端末もPCからスマートフォン/タブレット、IoT(Internet of Things)へとマルチ化していく。このような環境下で社外の優秀な人材と強調関係を構築しながら、同時に知的財産権や機密情報を保護するためには、アクセス制御やデータ暗号化の粒度を、各クラウドストーミングプロジェクトのライフサイクルに合わせてリアルタイムベースで最適化していくことが求められる。

 第3にソーシャルメディア利活用やパートナーシップマネジメントの観点から問題になるのは、ユーザー生成コンテンツ(UGC)、ソーシャルグラフ、派生的なメタデータなど、プロジェクトの進展とともに複雑化するデータの管理である。データソースが分散化、多様化する中で、データストレージ管理をセキュアかつ効率的に行いながら、データの可用性や整合性を維持することは容易でない。

 第4にオープンな情報開示、外部への説明責任の観点から問題になるのは、情報セキュリティに係るインシデント発生時に対応する検証/フィルタリングやリアルタイムのモニタリング体制である。企業の将来を担うテーマの新規事業開発を目的としたクラウドストーミングの場合、一旦問題が発生すると、従業員、顧客、株主/投資家、地域コミュニティ、所管行政機関など、様々なステークホルダーに影響が及ぶ可能性も大きい。

 下記の図は、本連載の第1回でも取り上げたクラウドセキュリティアライアンス・ビッグデータワーキンググループのビッグデータセキュリティ/プライバシーにおける10大脅威フレームワークである。

図 出典:Cloud Security Alliance Big Data Working Group「Expanded Top 10 Big Data Security and Privacy Challenges」(2013年4月)を基に、日本クラウドセキュリティアライアンス・ビッグデータユーザーワーキンググループが作成(2014年5月)

 クラウドストーミングへの取り組みを検討する企業のプロジェクトオーナーや、それを支えるIT部門に対しては、「インフラストラクチャセキュリティ」「データプライバシー」「データ管理」「完全性と事後対策的なセキュリティ」の4点から、上述の情報セキュリティのリスクを洗い出しておくことをお勧めする。


 次回は、今回取り上げたオープンイノベーション/クラウドストーミングの情報セキュリティ分野における利活用事例を紹介する。

著者者紹介:笹原英司(NPO法人ヘルスケアクラウド研究会・理事)

宮崎県出身、千葉大学大学院医学薬学府博士課程修了(医薬学博士)。デジタルマーケティング全般(B2B/B2C)および健康医療/介護福祉/ライフサイエンス業界のガバナンス/リスク/コンプライアンス関連調査研究/コンサルティング実績を有し、クラウドセキュリティアライアンス、在日米国商工会議所などでビッグデータのセキュリティに関する啓発活動を行っている。

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日本クラウドセキュリティアライアンス ビッグデータユーザーワーキンググループ:

http://www.cloudsecurityalliance.jp/bigdata_wg.html


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