ソーシャルメディア分析で海外に打って出るデータセクション田中克己の「ニッポンのIT企業」(2/2 ページ)

» 2014年08月19日 08時00分 公開
[田中克己(IT産業ウオッチャー),ITmedia]
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 もう1つが選挙中、どんな話題が書き込まれているのかを分析する選挙ウォッチャーだ。例えば、選挙直前は原発問題だったのが、中盤に入ると、経済・景気へと時間の経過とともに有権者の関心事が変化したことが、政党や候補者にとって、ネガティブなのか、ポジティブなのかを分析する。

 データセクションはソーシャルメディアの活用力をさらに高めるため、例えば、POSや市場動向など収集、蓄積するデータ量を増やす。それを推進する目的で、2014年4月に設立したのが、データエクスチェンジ・コンソーシアムだ。デジタルマーケティングを展開するデジタルインテリジェンスとLLC(有限責任会社)の形で立ち上げた同コンソーシアムは、設立時に約30社だった会員企業を、3年以内に300社に増やし、「各社が持っているデータを連携し、新しいビジネスモデルの創出に生かす」(澤社長)ことを目指す。

 澤社長によると、コンソーシアムの参加企業同士でデータを共同利用できるようなデータ取引所を2017年に設立する計画だという。「社内に蓄積したシングルソースのデータを分析している企業が、異なる業種企業が持つデータを組み合わせて分析することで、新しい価値が見えてくる」(澤社長)。

 その実現には、データを共有するために必要なシステムや、データの扱い方に関するガイドラインがいる。個人情報の取り扱い方も重要なテーマになる。コンソーシアムは、そうしたこともまとめ上げていく。

 一方で、データセクションは海外市場への進出を目論む。内需が縮小している中で、海外に成長の活路を求める企業は少なくない。「海外に打って出ようとする経営者はどんどん増えており、彼らを支援し、当社も海外に進出する」(澤社長)。まずは、ベトナムの子会社が現地のソーシャルメディアの情報を収集するなどし、下地作りを始めた。「東南アジアは巨大な市場になる」(澤社長)とし、各国に広げていく。


一期一会

 データセクションは60人弱の中小IT企業だが、5年前から新卒の採用を始めている。澤社長は「中途より新卒のほうが、技術などの吸収力がある」と理由を説明する。本当に優秀な人はなかなか辞めないので、中途採用は難しいこともあり、「ポジティブに仕事ができる」新卒の採用に踏み切ったという。

 採用基準が面白い。「バランスのいい学生ではなく、一芸に秀でている学生」。白紙を渡し、15分であるテーマに関するプレゼン資料を作成させ、語らす。論理的に説明できるか、つまりデータ分析に欠かせない能力を見極めている。

 そんな澤社長は大阪市立大学卒業後、富士通に入社する。SEや経営戦略、新規ビジネス企画などを経験し、退職した後に勤務した会社で約9年前に橋本会長と知り合った。あるシステムを共同開発する関係を続ける中、橋本氏から相談を持ち掛けられて、ソーシャルメディアの分析に将来性を感じ、データセクションの代表取締役社長に就いた。「一種のMBOのような形だった」という。45歳の澤社長、43歳の橋本会長のコンビで市場を開拓する。

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