沖縄地域IXサービスのオキット、IT分野で初の特区認定目指す

法改正によって沖縄県内の特別地区が拡充。認定条件に改善も図られた。そうした中、情報通信産業特区で最初の認定を狙うのがオキットだ。

» 2014年09月05日 07時30分 公開
[伏見学,ITmedia]

 2014年4月1日に施行された「沖縄振興特別措置法」の一部改正案。これによって、名護市に設置されていた従来の金融特区を抜本的に見直し、経済金融活性化特別地区を創設するほか、情報通信産業振興地域にかかわる地域指定権限を沖縄県知事に移譲するなどの新たな要件が盛り込まれた。

名護市の情報通信産業特別地区で事業展開するにあたって、9月2日に名護市・稲嶺進市長(左)を訪問したオキットの北村嘉規代表(中央)、ドヴァの土橋整社長(右) 名護市の情報通信産業特区で事業展開するにあたって、9月2日に名護市・稲嶺進市長(左)を訪問したオキットの北村嘉規代表(中央)、ドヴァの土橋整社長(右)

 情報通信産業に関連するポイントとしては、振興地域および特別地区を拡充。現在は、那覇・浦添地区(那覇市および浦添市全域)、名護・宜野座地区(名護市および宜野座村全域)、うるま地区(うるま市全域)が特区に、宜野湾市や石垣市など24市町村が新興地域の対象となっている。

 特区での優遇措置としては、特区内に営む特定の情報中枢事業から得られた法人所得について、設立後10年間、40%に相当する金額を損金の額に算入(ただし、情報通信産業振興地域にかかわる投資税額控除制度との選択)される。対象となる企業は、特区内に新設された法人(2012年5月24日以降)であり、常時使用する従業員が5人以上であることなどの要件を満たす認定法人(沖縄県知事が認定)である。

 今回の法改正後、特区での事業認定として情報通信産業の中で第1号企業を目指すのが、IX(インターネットエクスチェンジ)事業やISP事業などを展開するオキットだ。9月1日に沖縄県に申請し、近々認定を受ける予定である。

 オキットは、2012年6月に設立。同社が提供する沖縄の地域IXサービス「OIX」は、沖縄県内のデータセンター、琉球大学や沖縄IT津梁パークといった県内主要施設、国内大手キャリアと接続。これによってトラフィックの多い都市部のIXに依存せず、沖縄県内の通信については沖縄県内で完結できるため、不要なトラフィックが減り、通信の遅延やコストを抑えることが可能になる。

 OIXは元々、琉球大学が1999年に主体となって立ち上げた地域IX接続実験プロジェクトを継承、事業化したもの。従来の機能に加えて、複数キャリアをマルチホームで接続する仕組みや、広域イーサネットでOIXに接続すると沖縄県内のデータセンターをシームレスに利用できるサービス、モバイル端末から閉域網でOIX接続拠点へアクセスし、インターネット接続せずにセキュアな通信を行うサービスなどを持つ。

 今回の特区認定申請にあたり、オキットは本社を名護市に移転し、同市のインキュベート施設であるマルチメディア館に新オフィスを構えた。社員も5人にまで増員した。オキットの親会社で、ネットワーク基盤構築サービスなどを手掛けるドヴァの土橋整社長は「これまで補助金などを受けずに自前で事業を推進してきた。初めてこうした制度を生かすことができたことは喜ばしい」と語った。

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