IoTを推進するIntel、予防保全への適用で約9億円を削減業界動向メモ

製造分野における取り組みで同社は、データ分析の結果を予防保全に試験的に適用し、年間900万ドルのコスト削減効果を確認したという。

» 2014年09月30日 07時30分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 「モノのインターネット(Internet of Things)」なる言葉が注目を集める昨今、半導体大手の米IntelはIoTとビッグデータ分析を製造設備の予防保全に適用することで、年間900万ドル(約9億円)のコスト削減効果が得られるとしている。同社は三菱電機と協業し、2015年度にこの実績をソリューションサービスとして商用化する計画だという。

 9月29日に同社が開催した記者説明会ではセールス&マーケティング事業部 副社長兼エンベデッドセールスグループ ゼネラルマネージャーのリック・ドワイヤー氏が、産業システム分野におけるIoTとビッグデータ戦略を説明した。

 その主旨は、インターネット接続機器から得られる大量のデータを分析することでビジネス上の価値を創出するというもの。同社ではデータを安全に処理するためのセキュリティをプラットフォームに据え、価値につながるデータの発見、活用のための正規化、高度な分析技術、そして収益化につなげる仕組みを提供していく。

 その取り組みではOSのWind RiverやセキュリティのMcAfeeといったグループ企業のリソースに加え、日本を中心とした製造装置関連メーカーとのエコシステムの拡大に注力。製造装置へのインテルアーキテクチャ(IA)の採用を図り、「グリーンフィールド」(IoTなどによって新たに形成されるインフラ市場)の創出と、「ブラウンフィールド」(既存のインフラ市場)の高付加価値化を狙うとしている。IDC Japanによれば、2020年の国内IoT市場の規模は21兆1000億円が見込まれ、「ICT市場に匹敵するようになる」(インテル常務執行役員事業開発本部長の平野浩介氏)という。

Intelの製造現場では1時間あたり5テラバイトものデータが製造ラインから出力されているという。その“ビッグデータ”を分析して品質改善や予防保全につなげるという

 IoTというと、現状ではGoogle GlassやApple Watchのようなウェアラブルデバイスによる新市場をイメージしやすいかもしれないが、実際には今回Intelが取り上げたような産業システム分野の市場が非常に大きな存在になるとみられ、その多くがコスト削減と生産効率の向上によってもたらされると言われている。

 ドワイヤー氏は米GEのレポートを引用して、「例えば航空業で1%の燃費向上が達成されれば、15年間で300億ドルの節減効果につながる。電力業界では660億ドルになる。これらは一例に過ぎない」と語った。

 Intelではマレーシアの施設に、Atomプロセッサを採用した三菱電機製の製造コントローラを導入。製造工程におけるデータの可視化、分析による歩留まり削減や製品の品質向上への効果を実証し、年間900万ドルの効果を確認した。2社はこのノウハウをFA(ファクトリーオートメーション)分野に展開し、「大きな可能性を秘めた取り組みだ」(三菱電機FAシステム事業本部 役員技監の尼崎新一氏)としている。

ビッグデータ分析ではマーケティング活用が先行しているものの、実際の活用は業種や目的を問わず拡大しているという

 IoTとビッグデータ分析の活用は製造分野以外にも広がっており、ドワイヤー氏によれば、米国のトラック会社では車両から得た各種データを分析して低燃費化につなげる運転技術をドライバー講習に反映させているという。

 平野氏は、IoTがもはやマーケットのバスワードではなくなったと語り、収益を生み出す実際のビジネスになり始めたと強調している。今回の同社イベントでは産業システム分野がフォーカスされたが、今後は企業の情報システムとこうした仕組みの連携・協調が加速しそうだ。

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