IoTの「バーチャルカスタマエンジニア」 約1年強で実現につなげるサトーHDの選択とは?

自動認識技術やプリンティングシステムを手掛けるサトーホールティングスは、グローバルな新サービス「SATO Online Services」を2014年春に企画し、2015年上半期にも提供を始める予定だ。新規ビジネスの立ち上げを短期間で実現した理由は?

» 2015年02月19日 11時20分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 バーコードや2次元コード、RFIDなどを利用した自動認識システムやラベルプリンタなどの開発、製造、販売を手掛けるサトーホールティングス(サトーHD)は、2015年上半期にIoT(Internet of Things)型の新サービス「SATO Online Services」の提供を予定する。2014年4月に企画をスタートさせたが、短期間でのサービス開発を可能にしているのがクラウドの活用だ。

いろいろな職場で「見かけたことがある!」というくらいに導入されているという製品

 サトーHDは、店舗や倉庫、工場など様々な場所でラベルを簡単に貼り付けられるハンドラベラーを1962年に発明したことで知られる。特にバーコードプリンタは国内シェアの約4割を占め、世界的にも高いシェアを獲得。製造や流通、物流などあらゆる現場で不可欠な“モノ”を認識するためのソリューションを提供している。

SATO Online Servicesを担当するマーケティング統括部の北村久嗣氏

 近年注目を集めるIoTについて同社は、自動認識によるM2M(Machine to Machine)でのビジネスについて検討してきたという。「インターネットやメディアを通じた情報活用の姿が変化する中、当社としては業界に先駆けて新たな技術を取り入れ、現場にどのような新しい価値を提供できるのか模索していました」(マーケティング統括部 課長の北村久嗣氏)

 SATO Online Servicesは、「お客さまの現場に、バーチャルカスタマエンジニアが常駐します」をコンセプトに、ユーザーの現場に設置された機器の稼働状況をオンラインで24時間モニタリングする。故障などの予兆を機器が検知すると、ネットワークを経由で同社のヘルプデスクやユーザーにアラートが通知され、事前に対応できる。製品の安定稼働を支える新たな仕組みに位置付けている。

 例えば、工場のラインで商品に貼付するプリンタが万一故障すると、商品が出荷できなくなり、収益に大きな影響を及ぼす。同社では世界中にサポート体制を構築しているが、現場に駆け付けるまでの間に、どうしてもダウンタイムが生じてしまう。そこでトラブルの予兆を検知して未然に対処できればダウンタイムの発生を極力回避でき、ユーザーの事業継続にも貢献する。

 SATO Online Servicesで同社は、サービスを世界中に提供できること、機器の情報をリアルタイムかつ安全にやり取りできることを要件としていた。しかし仕組みを自社でゼロから開発するには多大な時間やコストがかかることから、海外で既に実績のあったセールスフォース・ドットコムのクラウドサービス「Salesforce Service Cloud1」やデータ連携・活用のための「Salesforce1 Heroku Connect」を採用した。

 「当初から2015年内のサービス提供を目指していたため、当社の要件に合うのがセールスフォースのサービスでした。検討開始から1カ月後にはデモ環境が構築されるなど、スピード感を持って取り組めることができます。米国の開発担当者とも時差の壁を乗り越えてスムーズにコミュニケーションができており、順調に取り組みが進んでいます」(北村氏)

 製品からデータを取得するセキュリティに関しても、製品からクラウド側への通信が主であることや、通信経路で暗号化することで安全性を確保している。

SATO Online Servicesに対応するCL4NX。グローバルモデルで展開される

 SATO Online Servicesに対応する製品は、2014年4月に海外から販売を開始したバーコード/RFIDプリンタの「CL4NX」を皮切りに順次新製品で利用できるようにしていく。将来的にはユーザーサポートのための重要な基盤となる。故障の予兆などの他にも製品から提供される様々なマシンデータを活用することで、品質のさらなる向上や円滑なサポートの実現にも役立てていく方針だという。

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