Edgeは、レンダリングエンジンにEdgeHTMLを採用しているが、JavaScriptエンジンにはIEで採用していたChakraが使われている。これは、ChakraがJavaScriptの標準規格なっているECMAScriptをサポートしていたり、FirefoxやChromeに負けない性能を持っていたりするためだ。Microsoftは今後新しいECMAScriptの規格が出れば積極的にサポートしていくことにしている。
しかし、Chakraだけでは高い性能を出せない。そこで新しく「asm.js」という仕組みを採用した。asm.jsは、JavaScriptで性能のボトルネックになる部分を整理し、JavaScriptベースのサブセットを規定したものだ。このサブセット言語で書かれたスクリプトだと、スクリプトを読み込んだ時点でコンパイルされ、ネイティブコードに近い性能でスクリプトが動作する。
asm.jsはMicrosoft独自のモノではなく、最初はMozillaがFirefoxのJavaScriptエンジンで採用し、その後Chromeなどにも広がっている。ある意味、新しい業界標準をEdgeでも採用したということなのだろう。
これによってJavaScriptの性能は飛躍的にアップする。Microsoftのベンチマーク(JavaScriptで作られたゲームエンジンのUnityのベンチマークソフト)では、Edgeでasm.jsをオンにすると、IE 11の3倍ほどの性能が出せるようになった。asm.jsを使わないEdgeとの比較では2倍ほどasm.jsを使う方が高速化されるという。
この他、EdgeにはAppleのSafariにあるリーディングモード(Webページからテキストだけを抜き出して、読みやすく表示)が用意されている。Edgeのリーディングモードは、クラウドのBing翻訳と連携し、自動的に翻訳できる。
Microsoftは明らかにしていないが、EdgeはWindows 10だけに提供され、Windows 7/8/8.1版には用意されないだろう。EdgeをWindows 10の魅力の1つに位置付けることで、Windows 7/8/8.1からのアップグレードを促したいのかもしれない。Microsoftはリリースから1年間、Windows7/8/8.1からWindows 10へのアップグレードを無償で提供する。
IEベースの業務システムを構築している企業にとってEdgeは、それほど魅力的ではないだろう。しかし、ChromeのようにWebアプリをオフラインで利用できるようにしたり、アプリのように使えたりすれば、モバイルやPCといった違いを気にすることなく利便性が高まる。
こういったことを考慮してEdgeへの移行を検討しておいた方がいいだろう。すぐに業務システムをEdge前提にしないまでも、システムを新しく開発したり、改良を加えたりする時には、Edgeで動作するようにしていくべきだ。今後、IE自体はメンテナンスモードに入る。新機能もなくなり、Webブラウザとしての性能も止まったままになる。やはり数年をかけてでも、企業はEdgeへ移行すべきだろう。
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