Squareとしては、スマホを使った単純な決済プラットフォームで終わる気はまったくない。彼らが「FinTech」企業を名乗る理由は、「商流そのもののあり方を作り直そう」としているからだ。同社の取締役の1人で、米国の財務長官も務めたローレンス・サマーズ氏は「多くの会社は、これまで行われていたものを少しずつ改良するが、Squareは完全に変えることを目指しているよい例だ」と自社を評価する。
そのために重要なのが、お金の流れに関するデータを可視化すること。先に紹介したカードリーダーやPOSレジのほかにも、オンラインで請求書を発行し、その支払いも数クリックでクレジットカード決済が完了する「SQUAREインボイス」(請求額の3.25%を手数料として徴収)や、店舗の売り上げデータをリアルタイムで分析する「SQUAREアナリティクス」(無料)も提供している。
店舗が独自にデータ分析を行うことでビジネスを拡大することが可能だ。例えば、長野県にある家具屋では、データを分析すると来客数が夕方以降に増えることに気付いた。そこで営業時間を1時間繰り下げてみたところ売り上げも改善したという。
また、あるカフェでは「来店者数に対してアイスコーヒーがそれほど売れていないこと」に気付いていなかった。それはデータによって初めて可視化されたという。そのカフェではメニューを刷新、もっと来店者の属性に“刺さる”ような商品の打ち出し方に変えてみると、途端に売れ始めたそうだ。
「店舗にとって『支払い』の機会そのものが重要であることは間違いありません。しかし、そこから得られたデータを金融サービスやマーケティングにつなげていくことはもっと重要なのです」(フライアー氏)
その代表例が「Square Capital」だろう。フライアー氏が「既存の金融商品にない、破壊的なローンの仕組み」だという新サービスは、米国で2014年5月から本格的に提供を開始したもの。端的にいえば、小売店を対象とした運転資金の前貸しサービスだ。
最短で翌営業日には融資が行われ、返済期限は特に定められていない。返済は日々の売り上げから自動的に天引きするかたちで行われ、売り上げが多い月は返済額も大きくなり、売り上げが少ない月には返済額も小さくなる仕組みだ。
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