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» 2015年11月11日 08時00分 公開

医療機関で「パブリッククラウド」は使えるか? 長野市民病院の挑戦 (2/2)

[池田憲弘,ITmedia]
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Azureの日本リージョン登場が転機に

 ところが、パブリッククラウドの導入計画を進めていた高野さんの前にもう1つの壁が現れた。それが価格だ。大手のSIerと相談したところ、「ホスティング(レンタル)に加えてハウジング(サーバ購入)もするサービス体制がほとんどで、初期費用に5年間のランニングコストを見込めば1000万円。とても手が出なかった」(高野さん)という。

 加えてITベンダーやSIerからの「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」準拠に対するフォローも乏しく、導入へ踏み出すことができずに3年もの間、プロジェクトは止まってしまったという。

 転機が訪れたのは2014年2月。Microsoft Azureのデータセンターが日本に設置されたことだ(関連記事)。フォッサマグナから離れた場所にある西日本リージョンのデータセンターを使え、価格面でもスモールスタートが可能になった。そして、幹部に向けて導入を説明する際には“日本マイクロソフト”というブランドが役に立ったという。

 「院長をはじめ、病院の幹部に話を通す際には“日本マイクロソフト”というブランドの安心感が有効でした。価格が安いこともあって、まるで“掛け捨て保険”のような感覚で導入を進められたのは大きかったですね。データが3重化され、分散して保管される体制も安心感につながりましたし、懸念していたガイドラインの準拠についても、ていねいに対応してくれました」(高野さん)

パブリッククラウド活用の先駆けに

 高野さんがAzure導入に向けた話し合いをマイクロソフトと始めたのは2014年4月ごろのこと。1カ月の試用を経て、同年8月からはQNAP製NASの評価機を利用してダミーデータによるバックアップの検証を行った。

 バックアップシステムは既存システムになるべく手を加えず、自前で構築した。電子カルテのデータをバックアップサーバにリアルタイムでレプリケーション。電子カルテのベンダーから中間ファイルをもらい、QNAP製NASを通じてAzureに送信するという仕組みだ。暗号化はしているものの、HTTPSで送信しているという。

photo バックアップシステムの構成図。小型のNASも活用することで、被災時の携帯搬送も可能になっている

 そして10月には本番用NASを設定、11月にシステムの稼働を開始した。本番の設定は「拍子抜けするほど簡単で、ファイアウォールの設定から何から全てが1日弱で終わった」(高野さん)そうだ。クラウドを使うことで、電子カルテのバックアップを安価かつ、手軽に保管できる環境を構築できたと高野さんは強調する。

 「医療業界におけるクラウド活用はまだまだ進んでいません。今回は暗号化したデータではありますが、パブリッククラウドにデータをアップしたというのは、大きな第一歩になると考えています」(高野さん)

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