最終回 ワークスタイル変革の正しい「進め方」小林伸睦の「成功に導く“ワークスタイル変革”現場論」(2/2 ページ)

» 2015年11月16日 12時00分 公開
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(3)各ポイントの検討と施策決定

 変革推進チームを中心にして、新しい働き方における検討ポイントを議論し、各項目について施策を決定します。詳細はバックナンバーの第4回〜第6回を続けてご覧下さい。


(4)スタートポイントの検討

 施策を決定すると同時に、施策の現場への展開範囲も決定します。特定の事業部門や、ある業務範囲でのみの導入ならばその範囲で進めます。同様に、全社的な導入の場合においても、まずは事業部門やある業務範囲から導入するのがよいでしょう。

 働き方を変えることの中心は、「企業内部のルールや意識を変えていく」ということですから、ある日を境に突然、劇的な変化が起きることはありません。したがって、プロジェクトの立ち上げ当初から全社規模での変革を一気に進めていくのは困難です。

 まずは、効果の出やすい組織や役割の範囲、企業のビジネス課題を観点に、優先度の高い業務や事業部門から始めていき、範囲を徐々に広げながら全社展開するのがよいでしょう。

photo 働き方を変えることとは、「企業内部のルールや意識を変えていく」ということ
写真:(c)2015 Citrix Systems,Inc. All right reserved.

(5)フィードバックと改善

 ワークスタイル変革を展開する上で忘れてならないのは、「働き方」とは「働く現場そのものだ」ということです。

 働く現場の従業員にとって、新しい制度、各種ルール、仕組みによって、変革前より業務がしにくくなるようでは意味がありません。

 働く現場での課題を解決していくことがワークスタイル変革を行う上での命題です。ITの仕組みやシステムに関してだけではなく、制度やルールも含めて現場の意見やフィードバックの収集、改善というプロセスを継続的に行います。この継続的なフィードバックと改善を経て、徐々に導入範囲を広げていき、さらにフィードバックと改善のプロセスを繰り返すことが、新しい制度やシステムを最適化していくことにつながります。

(6)定着化の施策

 ある程度導入が進んだら、それらを定着化させていくための施策も必要になってきます。

 その定着には、まずテレワークやモバイルワーク申請フロー、私物端末の業務利用におけるガイドラインなど、各種制度やルールについての正式なマニュアル化やドキュメント化を行います。

 さらに仕組みの操作や情報セキュリティに関するガイドラインを、新たな手続きなどもあるならば、それらのドキュメントを作成し、積極的に展開することが必要です。

 それらを従業員に浸透させるため、トレーニングをしていことも必要でしょう。ドキュメント化やトレーニングは地道な作業です。しかし、新たな制度やシステムの運用を定着化する上で非常に大切です。

総括:「ワークスタイル改革」は、企業や組織が今後直面する変化や課題に取り組むための戦略である

 連載「成功に導く“ワークスタイル変革”現場論」では、組織や企業がワークスタイル変革を遂行するためのポイントを解説してきました。

photo 写真:(c)2015 Citrix Systems,Inc. All right reserved.

 改めて強調したいのは、ワークスタイル変革とは、マーケティング用語やモバイル活用といった単なるITトピックではなく、企業や組織が今後直面する変化や課題に取り組むために練る戦略であるということです。

 この変革は、おそらく企業のIT部門だけでは実現できないことでしょう。企業の基本的な運営の在り方や従業員の意識を変えていくことが本質にあるからです。

 ただし、ITの活用なしに変革を実現することも困難です。働き方を含めて、ライフスタイルの変化は、社会や環境変化とテクノロジーの進化に大いに影響を受けてきました。そのことを踏まえると、ITに精通したIT部門がこの変革のリーダーシップを発揮できる・するべき重要な立場にあると言えます。

 ワークスタイル変革は、現在も多くの企業や組織で検討を進めています。そのような企業や組織は今後も増えていくでしょう。この連載が、「これからワークスタイル変革に取り組もう」としているみなさんにとって役に立つ内容であれば大変うれしく思います。


小林伸睦(こばやし・のぶちか)

シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社 営業推進本部 営業推進マネージャー兼エバンジェリスト。イベントやセミナーなどの活動を通して働き方やワークスタイルの変革を推進しながら、「モバイルワークスペース」ソリューションのエバンジェリスト活動およびパートナービジネスのレディネスを担当する。



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