ケンタッキーFCが“ネット注文システム”を導入した理由外食チェーン大手のIT戦略(2/3 ページ)

» 2015年12月11日 08時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]

顧客との接点を増やし、新たなビジネスチャンスを

 高尾さんをプロジェクトリーダーとして、ネットオーダーシステムの導入を検討し始めたのは2014年4月のこと。2014年はテストとしてクリスマス用メニュー限定での運用とし、2015年に本格稼働を目指した。「顧客との接点(タッチポイント)を店舗以外にも増やしていく」という経営戦略を掲げていた経営層とも思惑が合致し、すぐに話が進んだという。

 グループ会社のピザハットでWeb注文システムを構築した実績のある富士通に協力を依頼し、クリスマス商戦に向けてシステム開発を始めた。ピザハットの前例があったものの、その道のりは安易なものではなかったと高尾さんは話す。

 「ピザハットはデリバリーが中心ですが、ケンタッキーはテイクアウトが中心。早期予約割引やセット割引があるなど、ケンタッキーの方がメニュー形態が複雑だったこともあって、開発には時間がかかりました」(高尾さん)

 それでも、クリスマス用メニューの予約が始まる2014年10月末までにはシステムが実装され、無事にネット注文がスタート。当初は直営店のみでの展開を考えていたが、フランチャイズ店舗からの要望も多く、結果的に8割弱の店舗で採用された。

 ネット注文の場合はクレジットカードで決済を済ませるため、店舗では商品を受け取るだけでよい。予約時と商品受け取り時、双方で店内の混雑解消に効果がみられ、従業員からは前向きな意見が多かったという。

photo ネット注文システムの構成図(出典:富士通)

テスト後、データから見えてきたこと

 テスト運用が終わり、高尾さんたちがデータを調べてみると、さまざまな知見が得られた。全予約のうち、ネット予約の比率は10%程度だったが、そのうち3割が深夜帯に予約をしていたことが分かった。

 「調べてみるとネット予約をした方のうち1割程度は、ここ1年ほど利用がなかった方や新規の方でした。深夜帯に予約していた人が多かったことを考えると、普段、営業時間内に店舗に行けないような人にもリーチできたと思っています。年齢層も比較的若く、非常に好ましい結果でした」(高尾さん)

 一方で課題も残った。ネットで予約する際に画面が見づらく、注文までに時間がかかってしまったという意見が多く寄せられたそうだ。平常時のテイクアウトにも対応し、膨大なメニューをシンプルに見せるには――。高尾さんは同社IT部門のメンバーや富士通の担当者と週あたり3時間の会議を毎週続け、システムの要件を詰めていった。

 そして、2015年10月30日にネットオーダーサービスが本稼働。Web予約の比率は2014年に比べて1.5倍のペースで推移しているという。

photo ネットオーダーサービスの画面。クリスマス用メニューの場合、受け取り可能な時間が一覧で表示される

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