必ず「Win-Win」になる交渉を生み出す、4つのステッププロマネ1年生の教科書(2/2 ページ)

» 2016年03月17日 08時00分 公開
[岩淺こまきITmedia]
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交渉可能な項目リスト
項目 現状 最低条件(1点) 普通(3点) 最高条件(5点) 優先順位
納期 4月末 5月上旬 5月末 6月中旬 1(点数×3)
予算 ぎりぎり 追加無し 5%追加 10%追加 3
タスク 残り120 優先順位上位100のみ実施、残りは次フェーズ 優先順位上位80のみ実施、残りは次フェーズ 優先順位上位60のみ実施、残りは次フェーズ 2(点数×2)
作業場所、時間 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜
    (←----------------------------交渉可能な幅---------------------------------→)  

 リストを作成したら、上司など責任者や関係者に合意を取ります。このメリットは2点あります。1つは落ち着いて交渉に臨めることです。この領域では自社に不利益はないと自信が持てますし、交渉の場で持ち帰る事項が少なくなります。

 そしてもう1つ、交渉の場における“フライング”を防げます。例えば、自社内の他部署の人間が顧客と交渉にあたると、「では、それで受けます」と予想外の条件になる可能性もありますが、合意を取っておけばそのリスクも大きく減るでしょう。

3.先方と“すり合わせる”ための細かいアイデアを検討する

 交渉可能な条件が決まれば、あとは最後の仕上げです。この項目以外で、自社が工夫できることや、先方に依頼できるアイデアを用意します。こうした細かい譲歩や要求ができると、交渉終盤でスムーズに“落としどころ”が決まるのです。

 例えば「自社内で助っ人をアサインできないか」や「本来、自社で行う顧客への教育を、顧客側で行えないか」といった話です。実際に交渉のテーブルについてしまうと、最後の一押しのアイデアは、なかなか思い付かないもの。あらかじめ、複数案を用意しておくのがベターです。

4.相手と交渉し、合意を得る

 さて、いよいよ先方との交渉です。交渉の場では、相手の「Win」を再確認し、交渉可能な幅を自社のリストと照らし合わせながら話し合います。その際にリストの項目に対し、点数化をしていくと状況を理解しやすいのでオススメです。この条件を飲むと(通すと)自社に取ってどれだけの損益があるか常に確認しましょう。そしてWin-Winになるよう、1つ1つの条件を詰める中で、お互いに点数が増えるように調整していきます。

 今回のリストを例にとって考えてみましょう。交渉前に全ての項目が“普通”だった場合、18点が得点となります。ここからが交渉です。例えば自社の最優先事項が相手の最優先事項でなかった場合、そこは自社の希望を通すよう要求します。その代わりに相手の方が優先度が高い項目について譲るのです。

photo 互いの優先事項を把握し、双方の条件が良くなるように要求と譲歩を繰り返していくと、Win-Winへと至るのです

 例えば、自社にとって最優先事項の“納期”を最高条件にしてもらえれば、他の項目を全て最低条件にしても18点を割る事はありません。点数化することで状況が分かりやすくなります。そのためにも相手としっかり情報を開示し合うことが大事です。

 「そんなうまい話が……」と思うかもしれませんが、実際に確認すると、お互いの優先順位が違うというケースが多いものです。仮に相手の最優先事項が“予算”だった場合、その点を完全に譲り、納期を最高得点にすれば、自社の総合得点は22点となり、相手にとっても優先順位の高い項目を実現できるので、お互いの総合得点は高くなるはずです。


 「Win-win」とは一般的に、ブレークスルーが起こるような派手な結末ではなく、自分側の「交渉可能な幅」と相手側の「交渉可能な幅」の間で、お互いの譲れるところを譲り、譲れないところを尊重し合うことで、納得感のある合意を取ることを指します。良い交渉とは、互いの条件を徹底的に交換し合う行為だと覚えましょう。

 1つの事柄や項目にこだわり、「やる or やらない」「下げる or 下げない」などと言っていると水掛け論になり、やがて力の強い方が勝ちます。一般的に「調整します」と言うと、このようなケースや相手が折れるまでゆっくりと話し合うケースが多いのではないでしょうか。

 しかし、勝ち負けは別のコンフリクトを生み出し、中長期的にはよい関係を築けません。調整可能な対象を増やし、交渉に幅を持たせるよう意識することで、互いの納得感のある合意「Win-Win」が生まれるのです。

著者プロフィール:岩淺こまき

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 グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/ヒューマン・スキル講師

 大手システム販売会社にて販売促進、大手IT系人材紹介会社にて人材育成、通信キャリアでの障害対応、メーカーでのマーケティングに従事。さまざまな立場でさまざまな人と仕事をし、「ヒューマン・スキルに長けている人間は得をする」と気付く。提供する側にまわりたいと、2007年より現職。IT業界を中心に、コミュニケーション・ファシリテーション・リーダーシップ、フォロワーシップ、OJT、講師養成など、年間100日以上の登壇及び、コース開発を行っている。日経BP「ITpro」で、マナーに関するクイズ形式のコラムを連載中。

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