人間の位置を把握することで得られる効果を確認したことから、同社は2015年10月、Beaconの設置範囲を車いすとベビーカーにまで広げた実証実験を実施した。羽田空港にある車いすとベビーカー約200台、スタッフが使うトランシーバー約90台にBeaconを取り付け、それぞれの位置をPCやスマートフォンで一覧できるようにしたのだ。
JALでは、各空港で車椅子とベビーカーの貸し出しサービスを行っている。従来は所定の場所に車いすやベビーカーの在庫がなくなった際、スタッフが探して回っていたという。機材の場所が分かるとどれだけスタッフの業務が変わるのか、これを検証するのが実験の目的だった。
従業員に行ったアンケート調査でも、90%超のスタッフが在庫切れで困った経験があり、80%超のスタッフがトランシーバーでのやりとりに不便さを感じていたという。業務の改善点がはっきりしていたことから「時間の節約になった」「お客さまを待たせることがなくなった」「トランシーバーでもやりとりが減って助かった」など、実証実験への反応はおおむね良かったという。
一方で「車いすやベビーカーが使用中かどうか分かるようにしてほしい」「利用予約ができるといい」「スタッフの位置が分かるのは便利だが、トイレに行くときに恥ずかしさがある」といった改善を求める声もスタッフから上がってきた。こうした実験を行う前には、ユースケースの設定とともに、期待される効果について仮説を立ててはいるものの「実験後のユーザーの感想からは必ずと言っていいほど、新たな発見が出てくる」(小磯さん)そうだ。
ウェアラブル端末の可能性を模索するJALだが、そこから得られるデータはもちろん位置情報だけではない。身体情報を活用した実験も数多く行っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.