第5回 ソフトウェア定義ストレージとはどんなもの?データで戦う企業のためのIT処方箋(3/3 ページ)

» 2016年03月29日 08時00分 公開
[森本雅之ITmedia]
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サーバベース型SDSとゲートウェイ型SDSの特色

 サーバベース型SDSは、サーバの内蔵ストレージを利用し、複数のサーバを束ねて一つの大きなストレージプールとして利用する製品です。構成するサーバ(ノード)を増やせば全体としての容量や帯域幅を増やすことができ、将来に渡ってデータが増え続ける環境や、どれだけデータが増えるかの予測が難しい環境に向いています。オブジェクト型ストレージで利用されるほか、ブロック型やNAS型で利用するプロトコルにも対応しているものもあります。ただし、1ノードあたりや1回のデータのやり取り(トランザクション)あたりの性能はあまり変わらない(変えられない)製品も多く、第2回で紹介した性能のうち、特にIOPSが求められるような業務への適用には、事前の検証を含めて慎重に行うことをお勧めします。

 また、一部のサーバベース型SDS製品の場合は、各ノードの性能をある程度均一に保たないと、遅いサーバ(古いサーバ)が全体の足を引っ張り、性能が制限される場合があります。同一ハードウェアベンダーでも製品世代やラインアップが変わると、性能や特性が変わる(垂直方向の壁と呼んでいます)ことも多く、検討時にこの点をしっかりと説明してもらうとよいでしょう。

 最後のゲートウェイ型SDSは、汎用サーバとソフトウェアで構成され、接続されたストレージを束ねるコントローラとして振る舞う製品です。サーバ仮想化と合わせて「ストレージ仮想化」製品として呼ばれるのもこの製品になります。専用ストレージが内部に持っていたさまざまな機能を外部に切り出したものとも言えますが、1ノードあたりや1トランザクションあたりの性能が担保できる大規模向けの製品として提供されるものが一般的です。

 さまざまなベンダーのストレージが利用できる上に、高性能な専用ストレージが持つ多数の機能が提供されているほか、容量や性能を向上するスケールアップ的な拡張にもほぼ全ての製品が対応しています。ただしノードや容量の追加においてスケールアウト的に拡張ができるかどうかは、各ベンダーによってまちまちです。検討時にこの点をしっかりと説明してもらったうえで、将来を含めた要件に合致するか判断する必要があります。


 「ストレージの仮想化」という単語は2000年代前半から出てきていたテーマではありますが、日本で一般的に認知されてきたのは「SDS」という単語が出回り始めた2014年頃と、比較的新しい分野です。

 また、ストレージはサーバやネットワークよりも種類や機能が多く、高い専門性が要求されるようになってしまいました。精通したIT管理者やエンジニアがあまり多くはいないのが実情です。日本独自の文化によるところが多いものの、SDSはデータ管理の利便性や効率化、コスト抑制に対して非常に有効な対策であることもまた事実です。得意、不得意がかなり分かれる製品であり、どの製品を検討する場合でもSIerやベンダーに声をかけて、具体的な説明や提案をするよう依頼してみてください。

 次回は今回ご紹介したSDS製品それぞれについて、現在実際に世の中で利用されている製品や事例を挙げて、ユーザー企業の皆さんがSDSを検討する際の期待値や適用範囲をご紹介したいと思います。

執筆者紹介・森本雅之

ファルコンストア・ジャパン株式会社 代表取締役社長。2005年入社。シニアストレージアーキテクトおよびテクニカル・ディレクターを経て2014年5月より現職。15年以上に渡って災害対策(DR)や事業継続計画(BCP)をテーマに、データ保護の観点からストレージを中心としたシステム設計や導入、サービス企画に携わる。現在はSoftware-Defined Storage技術によるシステム環境の近代化をテーマに活動中。


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