自動車や自転車といった乗り物にセンサーを付けて“スマート化”する試みは広がってきているが、トライミールが着目したのはオートバイのヘルメットだ。道に迷ってもカーナビはない、突然のゲリラ豪雨で困る、走行中に会話ができない――といったオートバイならではの不便さを解決するスマートヘルメットを目指すという。
現在は、ヘルメットに装着できるスマホ連動の小型ディスプレイを開発し、地図と現在地が表示されるアプリを開発している。「小回りの利くオートバイは欧米を中心に販売台数が伸びており、日本でも1200万人が乗っているなど市場規模は大きい」と同社CEOの勝呂裕邦氏は話す。
こうしたスマートヘルメットは、ドイツのBMWや米国のSkullyも生産、販売されているがそれらはヘルメットとデバイスが一体化しており、20万円前後(Skullyの場合)するなど高額だという。トライミールの場合は後付け型なので、価格を約5万円程度に抑えられるとしている。今夏にクラウドファンディングを行い、秋に販売開始を目指すという。
「今後はツーリング仲間で音声通話ができる機能を2017年に、AR機能を2018年に提供する予定。最初の1年間で1000個、次の年には1万個生産できればと思っている。既に販売権がほしいというバイク会社もあるし、量産できれば価格はさらに下がるかもしれない」(勝呂氏)
今までITがあまり浸透せず、高齢化や後継ぎ不足が叫ばれている農業は、IoTによるインパクトが大きいとして今注目を浴びている産業だ。笑農和(えのわ)が展開するサービス「paditch」は、農作業の中でも“水田の水位調整”に絞ったIoTサービスだ。
種まきから育苗、田植えから収穫へと稲作にはさまざまな作業があるが、中でも群を抜いて時間がかかる作業が「水管理」だという。これは水田の水位と水温を調整するための作業だが、実際には水門に木板を装着したり外したりといった地味な作業である。
適切な水管理をするためには、早朝から冷たい水を入れるために全ての木板を見て回る必要があり、移動時間を考えると大きな負担になる。さらに農業人口の減少とともに、1人あたりが見る作付面積が増えていることから、開閉すべき水門が広範囲にわたるようになり、数も増えている。軽トラックで回っても3時間かかり、開閉合わせて毎日6時間の作業、というケースも珍しくないそうだ。
paditchは、水門の開閉をタブレットやスマートフォンで遠隔操作できるほか、設定した時間や水位で自動開閉する機能も備える。故障や水漏れといった異常時にはアラートを出してくれるという。現在はα版でモニターとなってくれる農家に提供している段階だ。今後は量産を目指すとともに、センサーを改良し、地温や水質、土壌内のミネラル成分といったデータを取得できるようにする計画。データはクラウド上に保存するため、営農指導や土作りのコンサルティングなどへの展開もにらむ。
現在は、作付面積15ha以上の水田だけで全国に56万枚の水門があるといい、農業従事者が減るに従ってさらに増える可能性があると、笑農和 代表取締役の下村豪徳氏は予想する。田んぼあたり1万8000円から、という価格でサービスを展開する予定で、リリース後3年で利益が出ると下村氏は踏んでいる。
「paditchを使って浮いた時間を有効活用すれば、加工や流通に業務を展開するなどさまざまなチャンスが生まれる。ゆくゆくはドローンやロボット、IBM Watsonなどとも連携し、海外でも通用するようなサービスに発展させていきたい」(下村氏)
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