「海のF1」とも称されるヨットレースの最高峰アメリカズカップに使用されるヨットは、時速80キロ近いスピードを出せるという。その実現にITがどう貢献しているのかについて、前回王者の「TEAM USA」に聞いた。
風を操り、水上を誰よりも速く駆け抜ける――さまざまなレースの中でもヨットレースは、風や波といった自然条件をどれだけ味方にできるかが、勝負を左右する。「海のF1」と称される世界最高峰のヨットレース「アメリカズカップ」では、ITの活用がその鍵を握るという。米Oracleの年次イベント「Oracle OpenWorld 2016」では、ディフェンディングチャンピョンチームで同社がスポンサードする「Oracle Team USA」がIT活用の様子を紹介してくれた。
アメリカズカップは、1851年に始まった世界で最も古いスポーツトロフィーの競技として知られる。「アメリカズカップ」という名称は米国を冠したものではなく、初代の優勝チームが米国だったことに由来するという。本選は前回の優勝国(防衛艇)と予選を勝ち抜いた国のヨットチーム(挑戦艇)が1対1で戦う。Oracle Team USAは前回の優勝チームだ。現在は2017年の第35回大会に出場する挑戦艇を決めるための予選が世界各地で開催されている。
アメリカズカップに使用されるヨットの規定は、基本的にマストの本数と水線長(船の前後長のうち水に触れる部分の長さ)に関するもので、その形状などは防衛艇と挑戦艇が合意した範囲で一定の自由度があるという。
当然ながら、ヨットの動力は自然の風だけ。ヨットをいかに速く動かすかは、「スキッパー」と呼ばれるクルーの力量と経験が左右する。スキッパーは、その時々の風の向きや風速を常に把握しながらマストやフォイル(水中翼)を動かし、ヨットをコントロールする。
アメリカズカップのヨットにおける最高速度は、1851年から100年以上にわたって10〜12ノット(時速約20〜25キロ)だったという。ところが、2007年を境にヨットの大幅な軽量化と形状の改良が進み、20〜25ノット(時速40キロ前後)へ一気にスピードアップ。まるでヨットが水の上を飛んでいるかのように、高速で移動できるようになった。
Team USAのパフォーマンスディレクターを務めるイアン・バーンズ氏によれば、「現在ではさらなる改良によって、40ノット(時速約75キロ)以上で走ることもできる」と話す。
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