これらのキーワードが、デジタルプラットフォームに求められる要件とはどういうことか。1つずつ簡単に説明しておこう。
まず1つ目の「ITシステム」は、既存のITシステムの合理化や近代化とともに、クラウドやモバイル、ソーシャルといった新しい技術への対応を進めていくことだ。ソンダーガード氏によると、「バックオフィス一辺倒からフロントオフィスへの注力」や「クラウドの有効活用」がポイントになるという。(図2参照)
ただ、こうしたITシステムの取り組みは、「5つの要件の1つにすぎない」と同氏。あとの4つが新たな見解である。
2つ目の「カスタマーエクスペリエンス」は、企業と顧客の接点になるところだが、「この分野は今後、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)などの新しい技術が適用されて大きな変革を遂げ、その評価が顧客満足に多大な影響を及ぼすようになる」(同氏)という。従って、企業はこの分野をデジタルプラットフォームの1つの要件として捉えて注力していく必要があるというわけだ。
3つ目の「IoT」については、2つの側面があるという。IoTを構築・管理する「IoT統合プラットフォーム」と、IoTから得られるデータをリアルタイムに分析する「IoTアナリティクス」である。同氏によると、いずれもITベンダーが提供する製品やサービスを適用すればよいが、重要なのは自社のビジネスにどう生かすか、である。そのためには「IoTアナリティクスをどううまく使いこなすかが勝負どころになる」という。(図3参照)
4つ目の「インテリジェンス」は、企業に関わる全てのデータを有効に活用することを指し、技術的な観点からいうと、主にビッグデータアナリティクスやAI技術の活用を意味している。同氏によると、ここでのポイントは「今後、アナリティクスにAI技術が採り入れられていく中で、それを活用できる人材を十分に確保できるかどうか」にあるという。
そして5つ目の「エコシステム」では、顧客、パートナー、サプライヤーとのAPIによる緊密なつながりがポイントとなる。また、そうしたAPIの管理や、エコシステム用のアナリティクスを整備することも重要だとしている。もちろん、リアルなエコシステムとも連携するのだが、ガートナーではあえて「デジタルエコシステム」と呼んでいる。
これら5つがデジタルプラットフォームに求められる要件だと説明したソンダーガード氏はさらに、「企業がこれらを推進していくためには、組織の在り方も見直す必要がある」と指摘。社内の各組織と連携したデジタル推進部門やそのリーダーとして最高デジタル責任者(CDO)を設置することなどを提案した。
企業は自ら5つの要件からなるデジタルプラットフォームを構築すべきだというソンダーガード氏の話は、2年前に語った自らの考え方を進化させたものとして非常に興味深かった。とくに、カスタマーエクスペリエンスやエコシステムを個別の要件として捉えた新たな見解は、企業がデジタル化を進める際のグランドデザインを考える上で参考になるのではないだろうか。
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