もちろん、ヤフーなどの検索サイトでも株価を見ることができるが、投資家向けのカブドットコムの場合、高いリアルタイム性が求められる。
分析に使うデータはアクセスログが多いが、ほとんどは外部のマーケットデータを使うそうだ。中でも最もよく使うデータは、現在の注文数などの状況を示す「板情報」で、株の約定を時系列で表示する「歩み値」を獲得して計算し、1秒後の株価を予想しているという。
同社がユニークなのは、口座数や受注件数をはじめ、システムの稼働状況までも企業情報として開示している点だ。これは、齋藤氏自身がデータを扱えることで生まれたポリシーだ。
「こうした情報は法的には開示する必要がないものです。各社員には、『社長の自分がデータを扱えるのだから、皆で開示するデータを分析してまとめなさい』と伝えています。情報開示は一度行うと基本的にやめることができないものですが、各種情報を慎重に扱うことにもつながるため、いい企業文化だと思っています」(齋藤氏)
ビジネスにデータ分析を生かす取り組みを続ける同社だが、まだまだ道半ばとのことで、データ活用における課題として、齋藤氏は以下の7つを挙げた。
特に齋藤氏が課題に感じているのが、「ユーザー部門にとってアクセスが容易なDWH環境がない」ことと「バッチ的な処理もまだあるため、リアルタイム性に欠ける」ことだという。
「中には、SQLを自分で書いてデータをまとめられるメンバーもいますが、全てのユーザー部門にとってDWHが容易に扱えるかというとそうでもありません。そして、リアルタイム性が低くなるということは、データの価値が下がるということ。それが、当社の価値を下げてしまうことにもなりかねないので、リアルタイム性をどんどん追求していくようにしています」(齋藤氏)
そこで同社は2016年、プロジェクトチームを組成してDWH/BI基盤の導入を進め、「HPE Vertica」や「Tableau」を導入している。その結果、大規模データ処理の速度は向上し、BIツールも使いやすくなったという。特にBIツールについては、いくつかの製品で、実際の業務(顧客)データを使った(Proof of Concept=概念実証)を実施して検討した。
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