世界最強の人間棋士柯潔(カ・ケツ)九段に完勝したDeepMindの囲碁AI「AlphaGo」がこの勝負を最後に引退する。DeepMindは今後、難病治療や新素材開発に活用できる汎用アルゴリズムの開発に注力する。
米Alphabet傘下のDeepMindは5月27日(現地時間)、囲碁世界レーティング1位の柯潔(カ・ケツ)九段に圧勝した囲碁AI「AlphaGo」を引退させると発表した。AlphaGoを育てたチームは次の課題に取り組むという。
同社のデミス・ハサビスCEOは「The Future of Go Summitでの世界最高の棋士との対戦は、囲碁プログラムとしてのAlphaGoにとって考え得る最高峰の試合だった。この試合がAlphaGoにとっての最後の試合だ」と語った。
2016年1月に初めてプロ棋士に勝利したAlphaGoは、同年3月には韓国のプロ棋士・李世ドル(Lee Sedol)九段と対戦し、4勝1敗で勝利した。今年1月に改良版「AlphaGo Master」が覆面デビューし、中国・浙江省(せっこうしょう)で5月23日(現地時間)から開催のThe Future of Go Summitで柯潔九段との3番勝負に臨んだ。
専門家はコンピュータがプロ棋士に勝つには10年かかると予測していたが、ディープラーニングでスキルアップしてきたAlphaGoはそれを数年で達成してしまった。
ハサビス氏は「AlphaGoを育てた研究チームは次の難問に取り組む。難病治療法の発見や省エネルギー、新素材開発など、非常に複雑な問題に取り組む科学者を支援する高度な汎用アルゴリズムの開発に挑戦する。もしAIがこうした分野でも目覚ましい新知識と戦略を生み出せることを証明できれば画期的だ」と語った。
AlphaGoはもう人間と対戦しないが、DeepMindは特設サイトでAlphaGo同士が戦った試合の棋譜を公開する。既に10試合分が公開されており、最終的には50試合になる見込み。
同社はまた、リクエストが多かった囲碁の教材ツールも開発しているという。このツールは、AlphaGoの盤面解析方法を紹介するものになる。AlphaGoに負けた柯潔九段がツール開発に協力する。
「われわれは(囲碁の世界にもたらしたものと)同様の興奮と洞察を新分野にもたらし、現代で最も重要で緊急な科学的問題の解決に挑戦する計画だ。AlphaGoの物語は始まりに過ぎない」(ハサビス氏)
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