敵は社内にあり! 抵抗勢力との向き合い方 「チーム編成の極意」榊巻亮の『ブレイクスルー備忘録』(1/2 ページ)

難しいプロジェクトをやりきる、抵抗に強いチームをつくるにはどうすればいいか? 理想的なチーム構成のコツとメンバーの集め方を解説します。抵抗勢力候補を巻き込んでしまうのも1つの手です。

» 2017年08月16日 07時00分 公開
[榊巻亮ITmedia]

この記事は榊巻亮氏のブログ「榊巻亮の『ブレイクスルー備忘録』」より転載、編集しています。


 「抵抗勢力との向き合い方」を解説する連載の6回目では、「チーム編成の極意」について解説する。

 「変革プロジェクトを立ち上げたいが、チームメンバーをどうやって選んだらいいのか?」――。こんな質問をよくいただく。私たちコンサルタントが変革プロジェクトを支援するとき、最初にするお手伝いの1つだ。

 難しいプロジェクトをやりきれるチームや、抵抗に強いチームをつくるには、どんなことに気を付けてメンバーを集めたらいいのだろうか?

どんなチームにどんな人を加えるか?

 まずは「チームの構成」について。どんなメンバーでプロジェクトチームを構成するのがいいのだろうか?

1. 抵抗勢力候補など、自分と違うタイプを集める

 変革を成し遂げるまでには、いろいろなことが起きる。関係者にもいろいろな人がいる。だからコアメンバーのスタイルが一本やりだと、難所を突破できなくなる。

 真にチームワークにすぐれた組織では

  • 同じ穴のムジナではなく、自分にないモノを持った人を集める
  • 他のメンバーの色に応じて、自分が演じる役割を微調整する(バランス感覚)

という力学が必ず働いている。例えば、

  • リーダーがアクセル役で、サブリーダーがブレーキ/ハンドル役
  • リーダーが強行突破型で、サブリーダーが根回し調整型
  • リーダーがアイデアマンタイプで、それを支えるプロジェクトオーナーが現実的に考え抜くタイプ

 要するにバランスが重要なのだ。

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 変革の方向性によっては、反対しそうな人や組織をある程度予想できる。そういった場合に取りうる選択肢は2つ。「プロジェクトチーム vs 抵抗勢力」という構図をあえてつくり、正面から戦う方法と、プロジェクトチームの内部に抵抗勢力になりそうな人を取り込んでしまう方法だ。

 通常は、「プロジェクト計画ができ上がり、いざ実装する段になってから反対されるよりは、計画立案に参加してもらった方が建設的」という理由から、後者の取り込み作戦をとる。

 誰でも、計画がいったんでき上がってから「これでやりますので従ってください」といわれても、なかなか「Yes」とはいえない。逆に、自分が参加して一緒に練り上げた計画には愛着もあるし、一生懸命実現しようとする

 それに、こちらで勝手に「抵抗勢力」などとレッテルを貼らずに、フラットに議論してみると、変革をよりよくするためのアイデアの宝庫であることも少なくないのだ。

 過去のプロジェクトで、私たちのクライアントのリーダーがチームづくりについて話してくれたことがある。伺った話をそのまま記載しよう。

 「ウマが合わないからこそ、彼をチームに引き入れたんです。彼の上司をどう口説くかは、ずいぶん悩んだのですが。

 ・そもそも、業務改革をやってみたいと思っている人

 ・ポストを問わず、言うべきことをいえる人

 ・それが「よく変えたい」という前向きさから出ている人

 こういう人が、プロジェクトには絶対必要だと思います。彼みたいな人が、自分の立場から「正しい反論」を言ってくれないと、変革の計画が脆弱(ぜいじゃく)になるんですよ。

 計画を練っている途中ではなく、手遅れのタイミングで「正しい反論」を出されると、プロジェクトにとって致命傷になってしまう。そうならないために、あえて彼みたいなストレートな物言いをする人をコアメンバーに入れ、きちんと議論を戦わせる必要があったのです。実際にそうだったでしょう?

 彼みたいな人をどうやって探してくるか。私は昔から「廊下トンビ」といわれているんですよ。いつも自分の席にいない。会社中を飛び歩いているから。用事があるとき、内線電話やメールは基本的に使いません。必ずその人のところに出向く。そして用事が済んだ後も、「こないだの方針説明会、どう思った?」「○○の業務は変えたいと思っているんだよね?」などと、本題と違う話をしばらくしてくる。

 そういう話をしていると、「こちらを向いて、議論に乗ってくれる人は誰か」「やりたいことを腹に持っている人は誰か」が分かってくる。そうやって目星がついてから、動くのです。自分の上司に動いてもらう場合もあるし、相手の上司を動かす場合もある。変革を成功させるために、当たり前のことをやっているだけだと思いますよ」


 この話を聞いたときに、身震いした。自分とウマが合わないメンバーをワザワザ骨を折って探し出し、チームに引き入れていた。しかもそれを“当たり前のこと”というのだから。

2. ベテランと若手のバランス

 業務を大幅に効率化する、新しいシステムを組み立てるといった目的のため、「ゼロベースで考えよう」というスローガンを掲げることはよくある。

 だが、現在の業務について何も知らなくていいというわけではない。現状を否定し、乗り越えるためには、現状を知らなければ話にならないのだ。だから、改革の対象業務についての細部や過去の経緯に至るまでよく知っている社員(=“生き字引”)は、変革プロジェクトにとって貴重な存在だ。

 とはいえ、そういったベテランばかりだとつらい局面も多い。ベテランは往々にして「現状の仕事のやり方がベスト」「こういうやり方をやっているのには、君たちには分からない深い事情があるのだよ、若いの」ということになりがちだ。それまで自分がやってきたことなのだから、ある程度は当然である。

 こういう人とは、「なぜ変わらなければならないか?」をじっくり話し合い、何でも現状を踏襲するのではなく、変えるべきことは変えるというスタンスに立ってもらう必要がある。この人が変革にとって力強い味方になってくれるか、変化を嫌う抵抗勢力になってしまうかは、紙一重だ。

 一方、業務をよく知らない若手社員は、業務改革プロジェクトから遠ざけられがちだが、実はプロジェクトには欠かせない存在だ。

 一般的な会社では、人材は常に不足している。だから変革に必要な人材は、プロジェクトを進めながら人を育てることになる。

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 若手の人選についてアドバイスを求められたときには、「現在はあまり知識を持っていなくても構いません。ガッツがあって、前向きな若手を、ぜひ何人か参加させてください。僕らも鍛えますから、プロジェクトが終わる頃にはエースに仕立てますよ」と強調する。

 実際に、あるプロジェクトでは、若手メンバーが大活躍した。それまで業務改革を進めていたメンバーを外し、何も知らない若手メンバーを入れたのだ。「プロジェクトのコアメンバーは白紙の方がよい。業務知識は他の社員に聞けば補えるが、ゼロベースで新しいことを考えるには、前提や制約で頭がいっぱいでない方が、むしろいい。それに彼女は伸びる!」というクライアントリーダーの判断だった。

 結果的には、周りも本人もビックリするくらい“大化け”した。彼女なりの不思議なリーダーシップがあって、他のメンバーも彼女に引っ張られてどんどんプロジェクトに参加するようにもなった。彼女がいなければ成功はありえなかったと思う。

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