インタビュー
» 2018年03月28日 08時00分 公開

【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜:「年間1000人と会い続けた」――ALSOKのAI活用、立役者はベンチャー出身の“異邦人” (2/4)

[大内孝子,ITmedia]

AI開発のノウハウを「自社」で獲得する

 その理由について、干場さんは「AIはブラックボックスではダメで、自分たちでもやらなければならないと気付いた」と振り返る。大量のデータを入力し、ディープラーニングで「何か」を判別できるようになったというだけでは、実用にはまだ遠い。本当に業務で使うためには、さまざまなパラメータを調整したり、要件から見直したりしてもう一度作り直す必要があった。

 ちょうどその頃、世間的なブームの後押しもあり、経営陣がAIに興味を持ち始めたという。本気で取り組むなら、それに見合う投資と力を持ったパートナーが必要――そう考えた干場さんは、経営陣に訴えた。

 「いろいろなベンチャー企業に会う中で、PKSHA Technologyと知り合いました。彼らには、『大量のデータを持ち、社会的インパクトを与えられる会社と組みたい』というニーズがありました」(干場さん)

photo PKSHA Technologyは、2012年に創業した若いベンチャー企業だ

 AIをサービスに実装できる企業や人材はまだまだ少ない。非常に順調にプロジェクトが進んだように見えるかもしれないが、もちろんその裏には多くの努力がある。このタイミングでPKSHA Technologyに出会えたのも、干場さんがこれまで培ってきた人脈によるものだ。

 「お互いの状況確認などの準備を経て、本格的に協業を始めたのは2017年1月です。4つのプロジェクトを始めて、丸1年かけて完成したのが、三菱地所さんと連携した『おもてなしAI』です。パートナーになる前は自前で開発していたのですが、組んだ後はまるで精度の高まりが違う。これはもう職人芸の領域で、彼らは勘所が分かっているんですよね。一緒にプロジェクトを進めたわれわれも、やっとノウハウが分かったように思います」(干場さん)

 ちょっとしたディープラーニングのライブラリならば、誰でも無料で手に入るし、Web上で簡単に使えるものも多い。導入や実装の方法もWeb上に転がっているが、それだけでは業務で使える人工知能は生まれないだろう。

 実用に耐え得るAIとは、すなわち、企業独自のビジネススキルをAIで置き換えたものだ。従って、自社独自のビジネススキル・プロセスを反映すべきソフトウェアの開発部分についても従来のように丸投げし、完全なブラックボックスとしてしまうと、試行錯誤を繰り返して精度を高めるという方法が採りづらい。無論、これがAI開発に限った話ではないことは言うまでもない。

 今後は、こういうケースがAI以外でも数多く出てくるだろう。「受注者」と「発注者」がきっぱり分かれ、言われたものだけを作るといった従来の考え方では、価値あるシステムは生まれない。関係者全員がチームとなり、本当の課題とそのソリューションを読み解くところから始める必要がある。ベンチャー企業と組んで成功したALSOKの事例は、AI開発への取り組み方という面でも参考になる部分が多いだろう。

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