「このホテル、あなたはいくらなら予約する?」も推測――楽天トラベルのAI活用、その裏側Teradata Analytics Universe 2018(2/2 ページ)

» 2018年11月07日 07時00分 公開
[高木理紗ITmedia]
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 例えば、バナーなどをクリックしてもらうための要素をユーザーごとに精査する「オンライン広告の最適化」、ホテルや旅行プランの予約を促すために、クーポンなどが必要かどうかをユーザーごとに判断する「メールマーケティングの最適化」、そして楽天トラベル側がホテルの価格を設定する場合、どの価格が最もユーザーに響くのかを探る「価格の最適化」といった内容だ。

 実際に効果も出始めた。メールマーケティングの最適化では、分析のアルゴリズムを改善し続けた結果、ホテルのページを閲覧したユーザーが実際に予約する割合が、「具体的な数字は明かせない」(勝田さん)ものの、従来の1.1倍になったという。

さまざまな種類のデータを分析できる環境を実現

 一方で、こうした分析に欠かせないのが、データウェアハウス(DWH)や分析エンジンといった設備だ。楽天トラベルでは、もともと使っていた他社のDWHで計算能力が足りなくなったことをきっかけに、2004年にTeradataを導入。その後、「Webサイトの訪問者数」「各飛行機チケットの売り上げ」といったデータの他に「ユーザーの行動履歴」といった非構造型データが増えてきたことをきっかけに、2014年に分析システムを刷新し、2015年に「Teradata Aster」を導入した。

photo 楽天が「楽天トラベル」向けに目指すというデータ分析の仕組み(太線部は現在使っているもの、点線部は将来的に採用を目指しているもの)(画像提供:楽天)

 「社内のデータサイエンティストやマーケティング担当者が、用途に合わせて、さまざまな種類のデータから使いたいものを最適な形で出し、すぐに分析できる環境が重要でした。選定の際には、複数社の分析エンジンを対象に、普段使っているロジックを回すPoCを行い、コストとパフォーマンスの両方を見極めました」と、楽天のトラベルサービス開発・運用部で導入に関わった鈴木敬志郎さんは話す。

 同社では、新たな設備を使った分析アルゴリズムの強化を続け、サービスのリニューアルを目指している。現サイトでは、各ユーザーの行動が翌日になってデータとして出る状況だが、「新サイトでは、数秒単位でユーザーの行動情報を更新できるようになる」(勝田さん)予定だという。

 「2020年末にかけては、ディープラーニングを使った広告やWebサイト表示の最適化の強化を続けます。ユーザーの行動に合わせた分析のニーズがある以上、楽天トラベルでは、今後ディープラーニングを活用する場面がより増えていくと思います。今のところは、データを収集して1日に1回データ分析を行っている状態ですが、今後はデータの更新と分析の頻度を1時間に1回、30分に1回と、よりリアルタイムに近づけていきたいですね。データプラットフォームが進化すれば、それが可能になると考えています」(勝田さん)

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