今でこそ働き方改革の成果を前面にアピールしている日本マイクロソフトだが、「改革を進める前は、生産性やコスト、企業風土の面でさまざまな課題に直面していた」――セミナーでこう話したのは、同社 Microsoft 365ビジネス本部の冨士野光則氏だ。
冨士野氏によると、改革を進める前の同社は、コミュニケーションが会議やメールに依存しており、情報共有が遅かった他、月に75万枚もの印刷物があったという。昼間はオフィス内の空席率が60%にも達しており、組織間の連携も進まず、男性に比べて女性の退職率が1.8倍ほど高い状況だった。
そこから品川オフィスへの移転などを通じ、フリーアドレスを採用したり、営業先や社内会議にオンラインで参加できるようにしたりするなど、あらゆる場所で仕事ができる環境作りを進めた。その結果、2010年から2015年にかけて社員の生産性(一人当たりの売り上げ)は26%増加。残業時間については5%の減少にとどまったが、交通費の削減、ペーパーレス、女性の離職率低減などについては、十分の成果を得られたという。
「働き方改革を成功させるには、経営トップの判断やマインド、オフィス環境も大切だが、IT活用も重要な要素。業績が好調であるほど、ITツールの導入が業績に好影響を与えると捉えている企業が多いことも調査で分かっている」(冨士野氏)
この他、コミュニケーションツール「Microsoft Teams」や、PowerPointの自動デザイン機能なども紹介し、セキュリティ面も含めたクラウド活用のメリットを紹介。Windows 10に加え、Microsoft Office 2010の移行先として、Office 365 ProPlusを提案し、両者が統合されたMicrosoft 365の導入を訴求した。
本セミナーは経営者向けということもあり、IT以外に焦点を当てたセッションもある。アイサイトテクノロジーの横張正巳氏が行った講演は「人手不足なんて関係ない『人が集まる中小企業とは』」。
横張氏は、労働人口の減少や後継者不足に悩み、廃業リスクがある中小企業が多いことに触れながら、「人手不足になったら人を採用するという発想を脱却し、人材を育て、定着率を改善し、生産性を上げること。経営の在り方そのものを見直す必要がある」と力を込めた。
そして、人を引きつける魅力を得るための方法として、事業に対する社会的意義を意識することや、人をワクワクさせる“100年先のビジョン”を定めることなどを紹介。独自の魅力を作ることが、人を集めるための近道だとした。
「社員が社会に貢献する役割を持ち、やりがいを持ってもらうことが大切。視点を変えて自社の魅力を再発見することで、魅力ある会社へと生まれ変われる」(横張氏)
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