インタビュー
» 2018年11月19日 08時00分 公開

「妥当な家賃」を自動で算出 レオパレス21がディープラーニングを導入した理由 (1/3)

「え、この家はどうしてこんなに家賃が高いの?」 家を借りたことがあるなら、こういう経験をした人は少なくないだろう。とはいえ、売り手側もその価格を決めるのに苦労しているのが現実。それならば、と査定をAIに代行してもらおうとしている企業がある。

[柴佑佳,ITmedia]

 電話とFAXがコミュニケーションの中心で、IT化が進みにくいといわれている不動産業界。その中で今、積極的なIT活用で注目されている企業がある。アパート賃貸の仲介やマンスリーマンションなどを展開するレオパレス21だ。

 契約書の電子化をはじめ、顔認証による解錠システムやRPAの導入、さらにはモバイルデバイスで制御するスマート家電などを「賃貸物件向け」に提供するなど、さまざまな施策が評価され、経済産業省と東京証券取引所が共同で、先進的なIT活用を進める企業を選出する「攻めのIT経営銘柄」に2年連続で選ばれている。

 そんな同社が今、注力しているのが、ディープラーニング(深層学習)の活用だ。間取りや築年数、立地条件といった要素が複雑に絡み合い、統一した基準を打ち出しにくい「家賃」の推測にAIを使う――そんなシステムを2018年2月に導入した。

photo レオパレス21は、アパート賃貸の仲介やマンスリーマンションなどを展開している

“正解”のない家賃相場、査定システムを外部購入から内製へ

photo レオパレス21 コーポレート業務推進部1部 賃貸関連業務推進課 課長の大塚雅人さん

 同社が、アパートの賃料査定にAIを活用できるかどうかを検討し始めたのは2016年ごろ。物件の賃料というのは、物件そのものの“スペック”に加え、周辺環境や周囲の物件も絡み合うため、正解が「存在しない」のが特徴だ。そのため、業界全体で賃料決定に至るまでのメカニズムが分かりづらくなっていた。家賃査定システムの導入を先導した、同社コーポレート業務推進部の大塚雅人さんはこう話す。

 「レオパレス21でも、従来は周辺の相場や過去の実績を基に、本部側の専門部隊が賃料幅を決めた上で、物件を扱う営業所の責任者が、地域ごとの状況を踏まえた見直しを行っていました」

 しかし、本部が決めた家賃と、物件の地域性などをより詳しく把握している営業現場の家賃希望に乖離があることも少なくなく、本部と現場との価格見直し作業の業務負荷が大きかったという。

 そこで、同社では値付けの透明性を確保するための参考値として、他社が販売している家賃の相場データを活用し始めた。Webサイトに掲載されている募集家賃や、実際の賃料といった業界情報から算出される「モデル賃料」を物件ごとに確認するという仕組みだったが、いくつか問題もあった。

 「活用していたモデル賃料には、『LEO-NET』や『家具家電付き物件』といったレオパレス独自のサービスについては反映されていません。そのため、本部が提示する賃料と、物件の付加価値や地域周辺の状況変化などを把握している、営業現場の希望賃料をすり合わせるのに、手間と時間がかかってしまっていました」(大塚さん)

 賃料は売り上げに直結する重要な指標である一方、その価格の“妥当性”を証明するのが難しい。同社が管理する57万戸について、半年ごとにデータを更新しており、負担するコストも大きかったことから、同社は独自の賃料査定システムの開発を検討し始めた。

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