ユーザーからは「電話よりも早く回答を得られていい」「今さら聞けないようなことでも気軽に質問できる」といったポジティブな声が出てきているという。メリットやデメリットを検討した結果、現在は毎日電話の問い合わせを受け付けるよう、ルールを元に戻したが、電話での問い合わせは10分の1程度にまで減ったままなのだそうだ。
「電話での問い合わせは、現在は1日あたり3〜4件程度です。対応で作業が中断することがないので集中して仕事ができています。また、単純な質問が減ったので精神的に楽になりました。自分自身も分からないことがあったら、ラッキーに聞いています」(システム開発運用部 第四課 梶原千帆さん)
システムトラブルなどの対応もあることから、ヘルプデスクへの問い合わせ件数の総数は、チャットbotの導入後でも10%減程度にとどまる。とはいえ、数値の変化以上に就労環境は改善されたようだ。
チャットbotとして一定の成果が挙がった今、浅野井さんは「ラッキーにアクセスできるポイントをさらに増やしていきたい」と語る。
現時点でも、ラッキーへのリンクは社内ポータルの一番目立つ場所にある。今後はさらに気軽に利用できるようにするため、チャットツール「Microsoft Teams」のbotに導入し、外出先からでもスマートフォンでアクセスできる環境を整える予定とのことだ。
また、同様のシステムを人事総務部門に展開する考えもある。情シスと同様に、人事総務部門も「用意したマニュアルが読まれない」「古いフォーマットで申請してくる」など、ユーザーからの問い合わせ対応が忙しい部署だ。
いくらマニュアルを最新のものに更新しても、それをユーザーが自力で見つけてくれるとは限らない。質問文からチャットbotが適切なマニュアルを見つけてくれれば、「ちゃんと読め」「どこにあるのか分かりにくい」という両者のすれ違いは減るだろう。
ラッキーくんの進化はこうした機能面に限らない。現在はクリスマスやお正月など、季節のイベントに合わせて、チャット画面の背景やアイコンのデザインが変更されている。遊び心があるのはもちろんだが、「視覚的な変化で『ラッキーがちゃんとアップデートされている』ことを伝える効果があります」(浅野井さん)という。あいさつなどの雑談にもより多く対応できるように、日々開発を続けているそうだ。
仕組みとしては単純で導入のハードルも低いチャットbot。しかし、だからこそ普及のためにどのような工夫をするかが、導入の成否を分けるポイントになる。失敗を乗り越え、ときには強制的な手段も使って成果を挙げた、横河レンタ・リースの事例は多くの企業にとって参考になるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.