日本企業は「GAFAのまねをせずに」グローバルで勝てるのか 組織、システム設計から考える「日本ならではの戦い方」CIOへの道【フジテックCIO 友岡氏×クックパッド情シス部長 中野氏スペシャル対談】(2/4 ページ)

» 2019年02月14日 08時00分 公開
[後藤祥子ITmedia]

「強い北米企業」と、どう戦えばいいのか

中野氏 そんな「強い北米企業」と、どうやって戦っていくのか――というのが、ずっと疑問なんですよね。

友岡氏 最後は結局、意思決定の問題なんですね。意思決定には責任と権限が当然あるわけだけれども、米国のモデルには、それを支えるためのジョブディスクリプションというものがあるんですよ。「プロセスに関しては、このバイスプレジデントが決めます」と明記してあれば、誰も文句を言わないですよね。

 日本はというと、ジョブディスクリプションがファジーというか、「無い」に等しいじゃないですか。僕がコンセンサスが必要だといっているのは、そういう仕掛けがないと“他人ごとになっちゃう”からなんですよね。納得しないので。

 米国人の納得の仕方と日本人の納得の仕方は違うんです。「これは職責を持っている○○さんからの要求です」と言えば、米国人は多分、納得するけれど、日本人は「あの人が決めることになっています」といっても、簡単には納得しないと思うんですよ。「そんなこといったって、実際に金もうけしているのは俺たちだろ!」みたいな話になっていきます。

 そこを、事業の執行と、プロセスデザインを別のレイヤーで分離して、組織的にもみなが納得するようなカルチャーを作れたら、さっき言ったような「面倒なコンセンサスマネジメント」は要らないんですよ。もちろんチェンジマネジメントは必要ですが、その手前のコンセンサスマネジメントのところはジョブディスクリプションでスッと行ける。それが米国モデルですね。日本はスッと行かず、じわじわと時間がかかります。米国モデルに近い形で成功している日本企業というのはまだまだ少ないと思いますね。

Photo フジテック CIOの友岡賢二氏

中野氏 日本でも新興のWebサービスは、Googleを参考にするところが多くて、しっかり実行できているかは別としても、ミッション、ビジョン、バリューを中心に据えている会社は多い。早い段階から自社の文化を言語化しようとして、自社の文化に合った人しか雇用しない会社も見かけます。

 そこまでやらないと、トップが決めたことを戦術レベルでスピードを上げて実行するのは無理なのかな、と思うのです。トップが決めたことが腹落ちしなければ、現場は本気にならないですよね。文化が統一されていないら、そのギャップを綿密なコミュニケーションで埋めていかなければならないわけですが、とても大変で時間もかかります。それこそ、“つまらない話まで、ことこまかに根回しする”必要が出てきてしまう。だから、カルチャーが浸透していることはポイントとして大きいのだろうと。

 友岡氏さんのおっしゃるように、日本人は、「確かに言っていることは正しいよね」というふうな「腹落ちした納得感」がないと動けないような側面があって、そこをどう作り込むかに経営層が苦悩している。「人数が増えてきたら、同じ日本人なのに話が通じないぞ。どうする?」みたいな。日本人だけの組織でも大変なのに、海外に出たら、人種も文化もさまざまなサファリパーク状態なわけですから。

 そうなると、「合議」と「集中」のどっちの方向にわれわれは倒していくべきなのかなと。

 Webサービスで切実なのは、「勝ち負けが1年ごとにがらっと変わるようなシビアな世界である」という点です。去年、流行っていたサービスが今年も通用するとは限らない。与えられた時間はわずかしかないのに、課題は山積み――そんな状況下で10年、20年と戦い続けて、しかも勝ち続けなければならないというときには、大本の方向性を要所要所で早く決めないといけない。そこをどうすればいいのかと。

 厄介なことに、プロセスに落とすときにはシステムが大きな役割を果たすことが多いのですが、システム構築にはリードタイムがある。お金も人もサービスサイドに比べて豊富にあるわけではないので、簡単に大規模な軌道修正をちょくちょくできるわけではない。そうなると、まず、どっちかで決めてから、それに最適するための仕組みを作りたい。仕組みってやっぱり手間と時間がかかるので、これをなるべく早い段階で決めて、そこからブレさせないで行きたい。会社の調子が悪くなると、サクッとコスト削減されやすい分野ですしね。キャッシュアウトが大きいから目立つ。

 そうなると、「どっちに走ったらいいのか」を判断するのがものすごく難しいのですよ……。

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