「気合いで達成する文化」がデータ活用を阻害し、若手を疲弊させる――NECがプロセス改革で得た気付きグローバル市場の競争を勝ち抜くために

グローバル事業の成長を目指し、各事業拠点のデータを一元的に管理、活用するNEC。担当者が「事実に基づく予測」と「現実的な施策」にこだわる背景には、かつてデータが属人化し、本社で若手社員がデータ集計に追われて疲弊していた過去があった。

» 2020年03月11日 07時00分 公開
[阿久津良和ITmedia]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

 国内市場が頭打ちとなり、グローバル展開を成長の鍵と見なす企業は多い。だが、保守的な日本企業では変化の激しい海外ビジネスに経営判断のスピードが追い付かず、好ましい成果を打ち出せる企業は少ないのが現状だ。

 そんな中、売り上げ比率の役3割が官公庁などの公共セクターだというNECは、海外事業関連の機能を集約する「グローバルビジネスユニット」を設立。海外売り上げを伸ばすため、グローバル事業を専任体制化するグローバルビジネスユニットの他、既存セーフティ事業を集中させてスマートシティーを実現する「NEC Safer Cities」の展開や企業の合併、買収に注力する。

グローバル規模の経営を支える“パイプライン管理”とは

 海外事業を成長させるために同社が重視するのが、「パイプライン管理」だ。アポイントメントから受注までの営業プロセスを可視化することで、分析や改善に生かす。

 同社の笠原武浩氏(グローバル企画本部 シニアマネージャー)は、2020年2月に都内で行われた日本オラクルと東洋経済新報社主催のイベントに登壇。「営業プロセスの可視化によって、事実に基づく予測や現実的な経営施策を実現する“パイプライン経営”を目指している。過去2年間、ワークショップやハンズオン、現地法人での実装などに注力してきた」と話した。

NECの笠原武浩氏

 同社は北米や南米、欧州、アジアの地域統括会社と各現地法人の財務および案件データを1つのシステムに統合しようしている。その一環として、同社は日本オラクルのクラウド型経営管理ソリューション「Oracle EPM(Enterprise Performance Management) Cloud」を採用した。

 また、予算管理に「Oracle PBCS(Planning and Budgeting Cloud Service)」やSFA(営業支援システム)、ERP(基幹系情報システム)ソリューションを組み合わせ、月次予測や事業別予測、顧客別予測、シミュレーションに活用しているという。

 「(パイプライン管理を活用した)営業用語である『確度』『ランク』『ステージ』に類する案件の進捗度を事業軸、地域横断で見通し、事実を基にした予測に生かす。

 日本人は『(意志の力でなんとか)予算達成します!』という営業も少なくない。しかし、意志を予測に反映させてしまうと、実際に期末に出る営業利益は予測よりもずっと少なくなりかねない。現実的な経営施策を打つため、各種データを徹底的に分析し、(目標と現実の)ギャップを解消しようとOracle PBCSを活用している」(笠原氏)

NECが実践するパイプライン経営の概要

 社内のデータ管理、活用を推進する同社だが、その背景には現地法人や本社の業務を含めた課題があった。

商談管理は“現地社長の頭の中”、データ集計に若手社員は疲弊――現場の課題を新システムはどう変えたか

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ