Slackを全社で導入 老舗グループ社長が語る現場との円滑なコミュニケーション術(1/2 ページ)

創業55年の老舗企業であるマスヤグループは、3年前から、管理統制型から自立分権型へと組織変革を進めている。その一環として同社では1年前からコミュニケーションツールの全社導入が図られた。社長が語る経営者と現場の円滑なコミュニケーションとは。

» 2020年06月30日 07時00分 公開
[田渕聖人ITmedia]

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 三重県伊勢市に本社を構えるマスヤグループは、業務範囲の拡大に伴い、3年前から組織改革に取り組んでいる。具体的には、長年無自覚に経営してきたトップダウンの管理統制型から、社員の自主性を重んじる自立分権型の組織への変革だ。同社はその一環として、およそ1年前にコラボレーションツール「Slack」を全社で導入した。オープンコミュニケーションへのカルチャーシフトを促進する目的だ。

 同グループは、米菓や清酒、物販、介護、ホテル、ブライダルといった事業を多岐にわたって展開する。社長の浜田吉司氏によると、Slackはグループ各社で1つずつワークスペースを設定して利用しているという。

マスヤグループ社長の浜田吉司氏

経営者と現場のコミュニケーションを阻害する2つの要因とは

 浜田氏は管理統制型か自立分権型かに関わらず、経営者が抱えている問題を以下のように語る。

 「経営者は現場の事実を知りたいと考えている。経営への報告の場では、基本的に数字が中心になる。それでは数字の背景にある人の営みはなかなか見えてこない」

 同氏によると、報告には事実だけではなく報告者独自の解釈、つまり「解釈バイアス」がかかるという。報告の結果がどうであれ、報告者自身に都合のいい解釈を紛れ込ませるので、事実を事実として知ることはできないというわけだ。

 また対面での報告にはもう1つ、業務効率面で問題があるという。「報告は準備に非常に時間がかかる。わずか10〜20分の報告のため、資料作成に平気で数時間をかけることがある。まるで儀式のようだ」(同氏)

 同氏は、報告が十分に機能しない要因として組織の「心理的安全性」の低さを挙げる。心理的安全性とは、自分の考えや感情の発信に抵抗がない環境のことだ。つまり、心理的安全性の低い組織では、報告においてネガティブな情報をぼかしたり、秘匿したりする。

管理統制型から自立分権型組織への変革が必要な理由

 マスヤグループが、管理統制型から自立分権型に組織を改革する理由はまさにここにある。現場の事実をあるがままに知るために、経営陣が管理統制を強めるのは逆効果だ。現場から悪い報告が上がると非難される組織の環境では、報告に費やす準備は増加するばかりで、従業員の裁量権も小さく当然心理的安全性も低くなる。

 「現場の事実を事実として十分把握できない状態では自立分権型の組織への切り替えは失敗する」(浜田氏)

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