大型基幹システムのAzure移行、失敗は許されない――第一生命を支えた「事前対策」Microsoft Focus

ニューノーマル(新常態)な働き方やシステムの開発体制が、業界を問わず求められている。ただし金融業界の場合、クラウド化やテレワークに当たっては細かいコンプライアンス要件や業務の複雑さといった課題が立ちはだかる。そんな中、第一生命はAzureを採用し、基幹システムをクラウド化した。彼らの移行作業を支えた対策とは何だったのか。

» 2020年07月27日 07時00分 公開
[大河原克行ITmedia]

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 日本マイクロソフトが金融向けサービスを強化している。同社は2020年6月末、同社が提供する金融機関向けマルチクラウドフレームワーク「Financial-grade Cloud Fundamentals(FgCF)」が、第一生命保険(以下、第一生命)の次世代システム基盤「ホームクラウド」に採用されたことを発表した。ホームクラウドは、FgCFを採用した初の基幹系システムになる。

 日本マイクロソフトがFgCFを発表したのは、2019年のことだ。第一生命に対しては、同フレームワークをベースとし、「Microsoft Azure」(以下、Azure)アーキテクチャを利用したホームクラウドの構築支援を開始。第一生命は2019年9月にホームクラウドの運用をスタートさせていた。

 FgCFは、マルチクラウド活用を支えるフレームワークと、同社が「ベースガイドライン」と呼ぶレファレンスアーキテクチャを提供する。

FgCFの概要(出典:日本マイクロソフト)

 日本マイクロソフトの綱田和功氏(エンタープライズ事業本部金融サービス営業統括本部 統括本部長)は「FgCFは、金融機関を環境(ITインフラ)、ルール、ガバナンス、人材といった観点から支援する。マルチクラウド活用を見据えたベースラインを整え、金融機関のTech Intensity(ここでは技術を使いこなせる企業になるための取り組みの意味)を強化できる」と話す。

日本マイクロソフトの綱田和功氏(エンタープライズ事業本部金融サービス営業統括本部 統括本部長)

 同社は今後、FgCFをはじめとするコンテンツを拡充する他、各種のレファレンスアーキテクチャとフレームワークを「テクニカルガイド」として、同社が運営する「Azure Base」で公開する。

データ基盤、連携機能――多様な機能を支える第一生命の開発戦略とは

 FgCFを活用した第一生命のホームクラウドは、オンプレミス環境とのデータ連携機能を共通サービスとして用意する。クラウドとオンプレミスを統合的に運用できるハイブリッド運用環境を整備しているのが特徴だ。

 また、Platform as a Service(PaaS)としてのクラウド利用や「Azure DevOps」と連携した開発を推進している。これは、ホームクラウドで動くシステムの運用を効率化しながら、ビジネス要件の変化に対してシステムの俊敏性を高めるためだ。

ホームクラウドの概要(出典:第一生命)

 2020年度上期には、ホームクラウドは7つのアプリケーションを新たに追加した。下期にはさらにアプリケーションを追加する予定だという。第一生命は今後、グループ会社にもホームクラウドの活用範囲を広げる考えだ。

 第一生命ホールディングスの太田俊規氏(ITビジネスプロセス企画ユニット 兼 第一生命保険 ITビジネスプロセス企画部 フェロー)は「ホームクラウドの基本的な考え方は、データを格納する本拠地(ホーム)をAzureに決めることで『データが分散して活用しにくくなる』という状況を回避する点にある。最適なデータ処理を最適な場所で実施し、その結果はホームクラウドに返すことで、データ資産を守ることにしている」と話す。

第一生命ホールディングスの太田俊規氏(ITビジネスプロセス企画ユニット 兼 第一生命保険 ITビジネスプロセス企画部 フェロー)

 「Azureには、(ホームクラウドの)運用機能や共通機能を実施する層、業務ファンクション層、データ分析層、連携層などを構築する。クラウドサービスを積極的に選択、活用できる環境を用意している。バイモーダルIT戦略として、ホストコンピュータとオープン系システム、クラウドを組み合わせ、業務特性に最適なものを選択し、使えるようにしている」(太田氏)

クラウド化の失敗を防いだ「事前対策」

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