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» 2020年11月04日 08時00分 公開

【特集】物流Techのいま(1):物流Techの登場で何が起こるのか、フィジカルインターネットとは何か

人手不足やサービスの複雑化、高度化が進む物流業界。デジタル化は早くから進んできたが、もう一段のデジタル変革が起ころうとしている。データ流通やAIの適用、クラウドサービスや新しいプラットフォームビジネスの登場など、情報技術を軸に業界の変革が次々と起こる。世界的な物流改革の流れと合わせて国内の状況がどうなっているか、今後数年でどう変わるかを見ていく。

[原田美穂,ITmedia]

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 物流業界を取り巻く状況はこの十数年間、大きな変化が立て続けに起こっている。

 内側を向けば価格競争に起因する収益力の悪化や輸送人員の超過労働が常態化する状況がある。外側に目を向ければ決済や代金出納、在庫管理、ロジスティクス計画の代行、システム企画支援など、物流業界の競争の主戦場は「モノを運ぶ」ことの価格競争だけでなく、その周辺サービスの品質にまで拡張している。例えば荷主に高度な物流サービスを提供する3PL(3rd Party Logistics)は企業のロジスティクス計画、サプライチェーンマネジメントにおける物流企業の役割は非常に大きなものとなっている。

 荷主の意向や厳しい市場競争の結果、他の業界と比べるとデジタル化やデータ活用、ソリューション提供型のサービスが早い段階で進んできた業界と言える。「物流業界の地位は決して高くはなかった」とは本企画に際して取材した企業の1社が記者を前に語った言葉だ。昨今「物流DX」として話題に上るのは、決してデジタル変革が進んでいない業界のIT化の話ではない。早期にデジタル化を推進し、高度なオペレーション最適化を推進してきた業界が、「物流Tech」を駆使してさらにもう一段の変革を進めるものと捉えるべきだろう。

トラスコ中山の倉庫内におけるAVGの採用(シャープ公式YouYubeチャネル公開動画より、リンク

特集:物流Tech

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物流業界はダイナミックなデジタル変革が進む。オペレーション効率最大化に向け、組織を超えた情報や技術の連携、設備のサービス化、IT基盤を使ったプラットフォーム開発など、企業間の競争も激しい。既に極限まで効率化されつつある業界だが、この数年はグローバルプレーヤーに加え、ITスタートアップやプラットフォーマーを目指すプレーヤーの参入が相次ぐ。ITを起点に大きな変革の中にある物流業界のトレンドを追う。


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 物流Techといっても、その内訳は多岐にわたる。マルチテナント型の倉庫運営を実現する技術もその一例だろう。倉庫を一棟丸ごとで長期間借りる荷主だけではなく短期間で利用する顧客が増えたことから、倉庫を複数の荷主が利用する。この場合、倉庫内のオペレーションは以前と比べて格段に難しくなっている。短期間で品物が変わっても確実なオペレーションで荷主のオーダーに答えるには、ロボットやAI(人工知能)によるナビゲーションが欠かせない。この領域はAIを使った協調制御に代表される自動運転技術の適用が進む。

 輸送車両の走行データなどのテレマティクスデータの活用も本格化しつつある。車両データの活用については、電車、バス、タクシーなど、複数の交通手段の情報を一元的に扱うことで新しい「移動体験」を提供する「Mobility as a Service」(MaaS)として、コンシューマー向けのサービスを前提に語られることが多い。物流を支える輸送手段も同様に「物流MaaS」として複数の事業者、複数の輸送手段の間でデータを流通させ、事業者の垣根を越えた輸送の平準化と効率化を促進しようという機運が高まっており、輸送工程の効率化や積み荷のマッチングなどを含む情報基盤作りに向けた議論が進みつつある。この領域は、複数事業者間のデータ連携や各種データを活用したデータ分析運用が含まれることからデータ分析基盤を持つクラウドサービス事業者も参入をもくろみ、リファレンスアーキテクチャ開発などを積極的に進めている。

物流MaaSの実現像(出典:経済産業省「物流分野におけるモビリティサービス(物流MaaS)勉強会とりまとめ説明資料」)

 物流の「ラストワンマイル」を支える小規模配送事業者では情報基盤のクラウド化、効率化が進む。経路の最適化や荷物の空きを利用した配送最適化などのサービスを提供する企業も現れた。将来的な自動走行車両やドローンを活用した配送も本格的に検討されている状況だ。荷役自動化やAGVAGV(Automatic Guided Vehicle:無人搬送車)の検証も進められている。

自動走行技術を研究するZMPは日本郵便が進める物流分野での配送ロボットの活用に向けた公道走行実証実験に配送ロボット「DeliRo」(デリロ)(上)を提供する。ZMPは倉庫向けの台車型ロボット「CarriRo」(キャリロ)(下)を複数の企業に提供している(出典:ZMP)

「フィジカルインターネット」とは

 こうした物流Techの隆盛と物流DX深化の先にはより大きなビジョンが見えている。「フィジカルインターネット」という言葉を聞いたことはあるだろうか。その名の通り、物理環境でインターネットのように荷物を扱おうという考え方だ。

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