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» 2020年11月11日 10時00分 公開

【特集】物流Techのいま(2):日通が採用し、ソニーや安川電機が出資、日本郵便が共創を模索する「プラットフォーマー」は物流の何を変えるのか

物流Techを語る際、直近で最も具体的な実装が進む分野の一つが倉庫オペレーションの最適化だ。EUに技術的な源流を持つ物流Tech企業が日本国内で注目を集める。ソニーや安川電機などから出資を受け、経営メンバーにはIT業界の大物も名を連ねる。注目される理由はそのビジネスモデルにある。大手企業との協働を続々と仕掛ける企業を取材した。

[斎藤公二, 原田美穂,ITmedia]

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 物流DXを推進するに当たり欠かせない要素の一つが倉庫や配送センターでのロボット活用だ。倉庫や配送センターでは以前から自動化、省力化が進められ、AGV(Automated Guided Vehicle、無人搬送車)やAGF(Automated Guided Forklift、無人搬送フォークリフト)が活躍してきた。以前は反射テープやランドマークなどのガイドを使って誘導していたが、近年ではロボティクスやAI(人工知能)の発達により、ガイドを必要とせず自律走行するAGVや複数のロボット同士が協調動作するAMR(Autonomous Mobile Robot、自律型協働ロボット)の活用が広がりはじめた。

 2020年5月、日本通運が同社平和島物流センターで物流倉庫向けAMRのサブスクリプションサービスを採用したことが話題になった。倉庫を支えるロボットにもサブスクリプションプラットフォーム採用の波が押し寄せる。

日本通運平和島物流センターに導入されたAMR。導入をアレンジしたプラスエーオートメーションのプレスリリース掲載資料による(出典:プラスエーコンサルティング)

 次世代AGVやAMRが急速に広まるきっかけの一つが、2012年のAmazon.comによるKiva Systems(現Amazon Robotics)の買収だ。Kiva Systemsはもともと自律移動搬送ロボットをAmazon.comの倉庫に提供していたロボットメーカーだ。買収時には倉庫の「棚」や「ラック」をそのまま移動させるロボットの映像をAmazon.comが公開して話題になった。その後、国内外を問わずさまざまなメーカーが自律制御型ロボットの開発を本格化させ、実際に多種多様な製品やサービスが登場することになる。

Kiva Systems(当時)が2010年に公開した自立移動搬送ロボット。現在主流のAMRなどよりも無骨でシンプルなものだが十分にインパクトのある映像として話題になった(出典:Kiva SystemsのYouTubeチャネル)

 もっとも、自律制御ロボットによる倉庫最適化ソリューションが百花繚乱の様相を呈する中で、メーカー独自の仕様や仕組みの乱立も招いた。結果としてメーカー連合の囲い込みやスケールさせにくい実装が増え、利用者である倉庫事業者側が不利益を被り兼ねない状況がある。高いコストをかけて導入するようでは、相当の規模でなければ生産性向上の面で評価できるものにはならない。

DXを阻む「ガラパゴス」を解消する

 このような状況を過去の携帯電話の実装になぞらえて「ガラパゴス」状態と捉え、メーカーが共通して利用できるプラットフォームを提供しようという動きがある。このトレンドをリードするベンダーの1社がRapyuta Roboticsだ。同社が提供する「rapyuta.io」はロボット制御のためのクラウドプラットフォームおよびPaaSフレームワークだ。

 rapyuta.ioの源流はEUの助成を受けチューリッヒ工科大学などの研究機関が共同で研究する自律制御型ロボットのミドルウェア開発プロジェクト「RoboEarth」にある。「ロボット向けwwwのアーキテクチャ」を目指し、多様なロボット同士がクラウドを介して協調制御するプラットフォームを開発するプロジェクトだ。同社の技術は既に多くの企業が注目しており、2018年にはソニー(Sony Innovation Fund)やSBIインベストメントなどの出資を受けている。その後、日本郵便による物流DXのための共創プログラム「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM 2018」で最優秀賞を受賞している。2020年には新たに安川電機やモノフルとの資本業務提携を発表。前述の日本通運での採用も決定した。

2 Rapyuta Robotic モーハナラージャー・ガジャン氏。Rapyuta Roboticsでは「ロボティクスを便利で身近に」をミッションに掲げる。

 同社CEOのモーハナラージャー・ガジャン氏はRapyuta Roboticsの位置付けを次のように説明する。

 「現在のロボット業界は1990年代の携帯電話業界に似ています。メーカーごとに独自の仕組みが提供され、互換性がありません。複雑性は増し、特定の分野ごとに分裂しています。われわれが提供しようとしているのは、携帯電話業界におけるAndroidです。さまざまなメーカーが、共通のOSの下で共通の開発ツールとマーケットプレースを使ってビジネスを展開できます。ユーザーは同じアプリケーションを異なる機器で利用できるようになります」

 rapyuta.ioはハードウェアごとの実装の差異を吸収してメーカーを超えたエコシステム構築を目指すものと位置付けられるが、Rapyuta roboticsの強みはそこだけではない。

特集:物流Tech

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物流業界はダイナミックなデジタル変革が進む。オペレーション効率最大化に向け、組織を超えた情報や技術の連携、設備のサービス化、IT基盤を使ったプラットフォーム開発など、企業間の競争も激しい。既に極限まで効率化されつつある業界だが、この数年はグローバルプレーヤーに加え、ITスタートアップやプラットフォーマーを目指すプレーヤーの参入が相次ぐ。ITを起点に大きな変革の中にある物流業界のトレンドを追う。


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