今や世界の「IT強国」となった韓国。DXが国家プロジェクトとして進められ、ICTインフラが世界トップクラスに整備されている同国で、民間企業のDX推進における課題とは何か。その解決策は。
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筆者は主に日本国内のICT領域を調査、研究している。この連載では日本のIT市場を分析する筆者の視点を交えて、「IT強国」といわれる韓国のDX(デジタルトランスフォーメーション)事情を紹介する。
前回は、韓国では政府主導でDXが進んでいる例として、国家プロジェクトの「韓国版デジタルニューディール」を取り上げた(注1)。
今回は韓国企業のDX推進状況と課題をみていく。
韓国では政府主導の国家プロジェクトの一環としてICTインフラが世界最高レベルで整備されている。
では、ICTインフラ整備が進んでいる韓国における企業のDX事情はどうなっているのだろうか。クラウドやビッグデータなどデータ革新技術の活用状況は、世界の主要国と比べてやや立ち遅れていると筆者は見ている。
コロナ禍に入ってから経営環境が不安定になる中で、DXを通じた業務プロセス革新と新しいビジネスモデル開発の重要性が高まっている。しかし、DXを積極的に推進している韓国企業は10%程度にとどまっている。
韓国産業技術振興協会が2020年5月に韓国国内企業1345社(大手・中堅企業49社、中小企業1296社)を対象として実施した調査によると、DXを「積極的に推進している」と回答した企業は9.7%、「一部推進している」と回答した企業は20.9%にとどまった。残り7割の企業は「推進していない」「よく分からない」と回答した。
繰り返しになるが、韓国のICTインフラ技術は世界トップレベルで、韓国政府も全産業においてデータを活用したDX推進に力を入れている。しかしながら、企業におけるデータ分析およびデータ活用は、期待ほど普及していないとみられる。
コロナ禍の発生前後で企業が置かれている経営環境は大きく変化している。韓国の企業がコロナ禍による環境変化に対応すると同時に、産業技術を発展させるためにはどうすべきか。筆者は、民間企業だけではなく、政府や各地方自治体が連携して情報を共有して、協力しなければならないと考えている。
具体的には、DXに関わる法制度の制定やガイドラインの提示、新たなビジネスを開発して展開するための推進体系の整備が必要だろう。多くの企業が課題だと感じているデジタル技術分野の専門人材育成には政府や大手企業による積極的な支援も欠かせない。
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