AIエージェント時代、企業の在り方はどう変わる? 「上司はいらなくなるのか問題」を考察Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2025年06月30日 16時40分 公開
[松岡 功ITmedia]
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AIエージェントの適用は企業改革のビッグチャンス

 図4は、図3の中央に描かれているシンビオティック・エンタープライズの在り方をさらに細かく示したものだ。

図4 シンビオティック・エンタープライズの在り方(出典:PwCコンサルティングの会見資料)

 先にも述べたように、現在と同じピラミッド型組織で、従来の業務フローにAIエージェントが入り込む形だ。ただ、組織図内の番号に対応して記されている右側の「AIと人間が担う役割」を見ると、もはや大半の仕事はAIエージェントが担っている。人間はその「監督役」を務めるといったイメージだ。

 三善氏はこの形態について、「AIエージェントが主体となり、多様な役割を自律的に担うことで、企業活動の効率化や高度化が進む」との見方を示した。

 図5は、図4に記されたAIと人間が担う役割について、AIが代替できるものとできないものに分け、その理由についても挙げられている。

図5 シンビオティック・エンタープライズにおけるAIと人間の役割(出典:PwCコンサルティングの会見資料)

 筆者がこの図で注目したのは、実務作業をAIが代替できる理由として挙げられている以下の内容だ。

 「6つのベースモデルの能力(情報理解力や情報統合力、感情理解力、タスク処理能力、アナロジーによる汎用力、自己学習能力)の向上やフィジカルとAIの融合により、従来、人間が担当していた単純作業や定型的および準定型な業務がAIによって代替可能となった。これによって業務は効率化、高度化され、人間にしかできない戦略的かつ人間的な価値を創出する役割へシフトする。人間は単純作業や反復作業から解放され、創造力や戦略的判断、対人スキルを生かす業務に専念することが可能となる」

 これがオーソドックスな見方であり、人間は「人間にしかできない」仕事をやるべきだと考える。しかし、果たして人間側が本当にそう対応できるかという懸念は、筆者の中ではむしろ膨らみつつある。

 そして、図3の右側に描かれていたシンギュラリティ・エンタープライズの在り方をもう少し細かく示したものが図6だ。

図6 シンギュラリティ・エンタープライズの在り方(出典:PwCコンサルティングの会見資料)

 三善氏は「AIエージェントが主体となり、多様な役割を自律的に担うことで、企業活動の効率化や高度化にとどまらず、組織構造や業務プロセスの抜本的な変革が起こる」との見方を示した。

 ここでのキーワードである「ホラクラシー型組織」は、一般的には耳慣れない言葉だ。「ホラクラシー(Holacracy)」とは、ギリシャ語で「全体」を表すホロス(holos)に由来する「ホラーキー(holarchy)」と、ガバナンス方法を示す「-cracy」を組み合わせた造語だ。「ピラミッド」との間にはもっと深い意味合いがあるかもしれない。ちなみに、ピラミッド型組織は三角形だが、図6のホラクラシー型組織は円で描かれている。

 このシンギュラリティ・エンタープライズの在り方から、最後に筆者も一言述べておく。この在り方こそが企業のデジタルツインの姿であり、DX(デジタルトランスフォーメーション)の最先端だろう。

 そこで最も重要なのが、このDXの最先端のグランドデザインを、AIの力も大いに借りながらも、企業のマネジメントだけでなくメンバー全員が「自分ごと」として協力しながら描き、そして実行することだ。それこそがこれからどこにも求められる「企業改革」ではないか。そう考えると、AIエージェントの適用は企業改革のビッグチャンスである。

著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。

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