脱メインフレーム、7割超が失敗 背景に「生成AIへの過信」 2026年度上半期システム刷新記事ランキング

生成AIがあればレガシー刷新は楽になる――。この期待に冷や水を浴びせる予測が発表されました。2026年度上半期(4〜9月)のシステム刷新関連記事トップ10を紹介し、「システム刷新における生成AIの現在地」と「AI時代に人に残る役割」に迫ります。

» 2026年09月22日 08時00分 公開
[田中広美ITmedia]

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 2026年度上半期(4〜9月)のシステム刷新領域は、日立製作所が国産メインフレームの提供終了を表明し、システム刷新を引き延ばす選択肢が狭まった半年でした。一方で、刷新を後押しするはずの生成AIについては、「生成AIがあれば何とかなる」という期待を見直さざるを得ない動きが目立ちました。

 メインフレーム、レガシー、COBOL、ERP刷新、移行といったテーマを扱った記事の中で、特に読者の関心を集めた10本を振り返ります。

2026年度上半期(4〜9月)システム刷新関連記事ランキングトップ10

生成AIの何が「過大評価」なのか そしてAI時代に人へ残る役割とは

 上半期で最も読まれたのは、1位のメインフレーム離脱に関する記事です。Gartnerは2026年6月、2026年に開始されたメインフレーム離脱プロジェクトの70%超が、意図した利益を生み出せずに終わるとの予測を発表しました。

 その原因としてGartnerが挙げたのが、生成AIツールの能力を過大に見積もる傾向です。

市場の訴求と、現場で発揮できる能力の「ギャップ」

 Gartnerのアレッサンドロ・ガリンベルティ氏(バイスプレジデント・アナリスト)は、生成AIが複雑なレガシーコードを変換、移行する能力について、市場で語られる内容と現実の間にギャップがあると指摘しました。同氏によると、投資家からの強い圧力によって、ベンダーは成果改善への寄与が明確でない場合でも自社製品にAIを組み込む傾向にあります。

 ただし、Gartnerが失敗の挙げた要因は生成AIへの過大評価だけではありません。

 メインフレームアプリケーションは基幹業務を支えているため移行失敗時の影響が大きいこと、そしてメインフレームに熟練した人材が減少していることも背景にあるようです。

退路は狭まり、頼みのコンサルタントも足りない

 ただし、「生成AIへの過信は危険だ」と言われても、刷新を先送りできる状況ではありません。3位に挙がったのが、富士通に続き、国産ベンダーである日立製作所(以下、日立)のメインフレーム事業撤退の記事です。

 日立はメインフレーム向け専用OS「VOS3」の販売を2027年11月に、保守を2034年12月に終了する方針を発表し、今後は既存システムを刷新するモダナイゼーション事業に経営資源を移すとしています。9位の富士通と日本IBMの協業始動も、COBOL資産の刷新を前提とした動きです。

 そして、システム刷新に踏み出そうとする企業にとって頭が痛いのが、担い手不足です。2位の寄稿で、日本タタ・コンサルタンシー・サービシズの加藤浩章氏(グローバルコンサルティングプラクティス統括本部 コンサルティングパートナー)は、SAPのERP「SAP ECC 6.0」からの移行を巡る事案を紹介しています。

 伴走していたコンサルティング会社が別プロジェクトの影響でシステム開発部隊を充てられなくなり、日本に拠点を設ける15社に提案を依頼した結果、全社から辞退されたというものです。数億円の案件でも辞退されるという衝撃の事態に、加藤氏はSAPコンサルタント不足の深刻さが理解できるとしています。

 生成AIは過信できず、ベンダーの人手にも頼り切れない。この状況で、AI時代のシステム刷新においてユーザー企業とベンダーの「人」には、どのような役割が残るのでしょうか。

「構想策定の質が成否の8割を決める」 自社のIT部門に残る仕事

 2位の寄稿で加藤氏が最優先の対策として挙げたのは、要件定義やシステム開発の前段にある構想策定です。プロジェクトの所要期間や人員体制の全体像を描き、精度の高い概算コストを算出した上で予算を確保するプロセスが不可欠だと同氏は書いています。

 加藤氏は、基幹系システムの再構築経験がある人材が社内にいれば、自社メンバーで構想策定プロジェクトを立ち上げ、RFP(提案依頼書)を作成してベンダーを選定できるとしています。コンサルタントが足りない時代に、自社の状況を整理し、いつ・何を・誰と進めるかを描く構想策定が、ユーザー企業側の人に残る仕事だというのが同氏の主張です。

日立が語る「足りないのはCOBOL人材ではない」

 では、生成AIをレガシー刷新に積極的に使っている日立は、AIを何に使い、人との役割分担をどう整理しているのでしょうか。

 4位の記事で日立の後藤恵美氏(AI&ソフトウェアサービスビジネスユニット Head of Modernization CoE)は、レガシー問題の本質をこう語っています。「足りないのはCOBOL人材ではありません。現行システムがなぜそうなっているのか、業務がどうなっているのかを知る人材が減っていることが一番の問題です」

 後藤氏は、人間にしか担えない領域として「意図」の解釈を挙げています。仕様書にプログラムと同じことが書いてあればいいのではなく、「なぜそう設計するのか」という意図が一番大事だというのが同氏の考えです。

 5位の記事は4位の記事の後編となり、引き続き日立がシステム刷新領域で生成AIをどう使っているのかを紹介しています。この記事によると、現行システムと新システムの出力を突き合わせる「現新照合テスト」で、不一致箇所と原因候補を生成AIに提示させるという試みが進んでいます。しかし、それでも人の手でしか進められない領域があるようです。

ランキング外の寄稿が示す、人が守るべき「設計情報」

 ランキングには入っていませんが、同じ時期によく読まれたのが、SCSKの室脇慶彦氏(顧問)による寄稿「『現行機能保証』はなぜ“悪魔の言葉”になったのか」です。この記事では、構築から10年以上たったシステムが「何のために」「どう動いているか」が誰にも分からなくなる原因に迫ります。

 国産メインフレームの提供終了とSAP ECC 6.0の保守期限が迫る中、刷新を先送りする余地は年々狭まっています。生成AIをどこに使い、人が何を引き受けるのか。下半期も「ITmedia エンタープライズ」は、その判断材料となる情報をお届けしていきます。

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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