[マクデータ] リモート統合は新たなフロンティアレージ関連ベンダ それぞれの戦略(1)

マクデータは、これまで同社が注力してきた企業のデータセンタの外に、新たな市場ニーズが存在しているという。同社にとっての新たなビジネスの可能性とは何か

» 2006年06月22日 12時00分 公開
[三木 泉,@IT]

 米マクデータはダイレクタ(大規模SANネットワーキング機器)をはじめとするSANネットワーキング機器の有力ベンダだが、2006年に入ってリモートオフィス統合戦略を打ち出した。「ROC」(Remote Office Consolidationの略)と名づけられたこの戦略は、さまざまなストレージプロトコルで遠隔拠点のデータを企業の中央データセンタに集めるとともに、データ管理・保護サービスを付加価値として提供していこうとしている。

 ROCを具現化する具体的な製品としては、現在WANアクセス高速化装置「SpectraNet WDS Accelerator」や電子メール複製装置「SpectraNet Replicator for Exchange」(SRA)などが提供されている。前者は、WAN接続においてTCPや各種アプリケーションプロトコルの処理を高速化する装置。後者はボックス製品で、Microsoft Exchangeのメールサーバのデータを複製し、障害復旧に備えることができる。同社では、今後にも遠隔拠点のデータ統合と、統合されたデータの管理を高度化する製品を出していくつもりだという。

 米マクデータの上席副社長兼COO トッド・オセス(Todd Oseth)氏に、この戦略の背景を聞いた。

企業のデータの半分近くはデータセンタの外にある

──なぜリモートオフィスの統合をいま語ろうとしているのですか。

ALT 米マクデータCOO トッド・オセス氏

 マクデータは、これまで企業のデータセンタを対象とした市場で支配力を発揮してきました。しかし、どこからでもデータアクセスができることを目指してきました。米Nishon SystemsやCNTなどの買収や提携を通じて、リモートデータアクセスの分野に参加するためのツールを手にすることができたのです。

 例えばILMを考えたときに、最初に行うべきなのはデータの統合です。企業において、平均で50〜70パーセントのデータはデータセンタの外にあります。買収や提携で手にしたWAN高速化装置や距離や接続の課題を克服するためのさまざまなプロトコルに対応したエクステンション装置を用い、リアルタイム、そしてそれに近いニアタイムのデータアクセスを提供し、災害復旧を含めた企業における問題を解決できます。

 当社が提供しているようなリモートオフィス統合製品を持っているベンダはほかにはありません。特に重要なのは、当社のWANアクセス最適化製品は。ファイル単位のアクセスとブロック単位のアクセスの両方に対応していることです。

──企業内のデータをデータセンタに集中化させることで、既存のデータセンタ向けダイレクタやスイッチを売ることが目的なのですか。

 違います。これはもっと包括的な取り組みなんです。距離や地理的条件がいくら不利な条件であっても、世界のどこからでもデータにアクセスできて、事業継続性も確保される環境を提供することで、当社にとっても非常に重要な事業分野を開拓していくことができます。

 データセンタにこだわるのは古い考え方です。新しい考え方は、すべての人々が、リアルタイム、あるいはそれに近い形でアクセスできるようにすることを目指すのが新しい考え方です。あらゆるデータにアクセスできるようにしてはじめて、データを適切に分類し、取り扱いを変えることができるようになります。

 リカバリを即座に実施しなければならないデータもあれば、10〜20分単位でいいものもあります。ユーザー企業の持つデータ復旧ポイントに関する基準が何であれ、当社では対応に必要な技術を提供していきます。

 当社では「Smart I/O」という考え方を製品に組み込んできています。これでストレージの仮想化、複製、バックアップ、仮想テープライブラリ、そしてCDP(継続データ保護)といったことが実現していきます。リアルタイムにあらゆるデータを提供することをベースとして、ネットワークでこれを提供していくことがポイントです。

データアクセス市場をネットワークから開拓する

──こうした新たな製品群は、マクデータのビジネスにどのようなインパクトを与えるのでしょうか。

 2005年時点でSANネットワーキング市場は年間約22億ドルでした。しかし、SANの市場の伸びは、10〜15パーセントにとどまります。しかし、当社ではデータアクセスの市場全体に事業を広げることで、年間10億ドルの市場を相手にすることができるようになりました。バックアップや複製といった、歴史的にSAN市場に含まれていない要素がたくさんあるからです。

 バックアップや複製をインテリジェントなネットワーク機能として組み込むことで、安価なソリューションが提供できます。複製では、多くの場合ストレージ装置のコントローラの部分がその実行を補助しています。しかしコントローラは高価なコンポーネントです。ネットワークにこの機能を組み込んでしまえば、ストレージ機器の機能に依存せずに複製が実行でき、何ギガバイトものキャッシュが不要になります。

 安価なだけでなく、より有効でシンプルな手段を提供できるのです。

 特に日本では、SANが複雑なものと考えられており、これが大きな課題になっています。しかし、SANにインテリジェンスを与えてストレージ機器をその下に包含することで、これまでよりはるかにシンプルになります。SANの導入ももっと楽になるでしょう。

──ストレージ機器ベンダは、自分たちの機器にインテリジェンスを持たせ、付加価値を高めようとしています。こうした動きとぶつかり、利害が相反することにはなりませんか。

 当社では、新しい考え方の種をまきますが、販売はパートナーに行ってもらっています。こうしたパートナーモデルは当社にとって非常に大切で、これを変えることはありません。そしてIBMやEMCなどは有力なパートナーです。しかし、IBMやEMCのような大企業になってくると、新しい製品のためにセールススタッフを訓練するだけでも膨大なコストがかかります。そこで当社のような企業は、これらの企業には割が合わないようなことを行うわけです。つまり、これら企業がビジネスを行う際に付け加えてもらえるようなものを提供していくのが当社の狙いです。

著者紹介

▼著者名 三木 泉


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