連載
» 2007年04月17日 12時00分 公開

顧客指向開発のすすめ(2):業務設計の前に顧客定義をしっかりやる (3/3)

[營田(つくた)茂生,日立ソフトウェアエンジニアリング]
前のページへ 1|2|3       

企業内に存在しない情報のリサーチ

 実は前章で述べたリサーチは、企業内/情報システム内に存在するデータをいかに情報化するかという論点で述べている。脱線するが、JIS X 0001ではデータ、情報の用語がそれぞれ定義されている。データは「情報の表現であって、伝達、解釈または処理に適するように形式化され、再度情報として解釈できるもの」であり、情報は「事実、事象、事物、過程、着想などのものに関して知り得たことであって、概念を含み一定の文脈中で特定の意味を持つもの」と定義されている。

 話を戻すと、現在の顧客は多面的である。ある分野の高額商品を買う人間は必ずしも高所得ではないし、高所得者が価格にこだわりを持たないとは限らない。

 そのような情報、特にサイコグラフィック情報については、企業の中にも情報システムの中にも存在せず、外部に求めるしかない。外部から情報を求める手法の代表的なものについて、下記の表に示す。

代表的な手法 リサーチ方法・内容 なにがわかるか
フォーカス・グループ 8〜12人の参加者が、専門の司会のもとで特定のトピック(新商品のアイディア、新しいコミュニケーション手法、既存商品など)について語り合うという手法。 ただし、フォーカス・グループがターゲット顧客を代表しているかは統計的なフォローアップが必要 消費者のニーズ
ものの見方
態度
サーベイ フォーカス・グループで得られた結果が、より大規模な集団にも適用できるかを調べる手法。サンプル集団(ターゲット顧客の代表とみなしうる集団)にアンケート用紙を送付して回答を依頼する 消費者のニーズ
ものの見方
態度
デプス・インタビュー 全員が正直に回答したとしても、アンケート結果から消費者の動機に関する深い洞察を得ることは難しい。回答の際に抑制や合理化が働いている場合や、回答者自身が本当の気持ちに気付いていない場合もある。これらを補完するために、心理学的 アプローチをベースにした個別面談を行う フォーカス・グループなどの補完
コンジョイント分析 詳細に記述された仮のコンセプトを複数提示し、消費者にランク付けを行わせる。ここで得られた結果を分析することで、 消費者がどの属性をより重視するか明らかになる 消費者のニーズ
ものの見方
エスノグラフィック調査 消費者の行動は、集団のもつ信念や規範・価値観などの影響を強く受けている。文化人類学的な分析技法を用いると、消費者の行動に関して通常のサーベイなどでは知りえない側面が明らかになる 興味
考え方
意思決定の仕方

 ここで注意すべきなのは、個人情報の取り扱いである。個人情報保護法を順守することは当然である。しかし、情報漏えいを恐れ必要な情報を取得することに消極的になってはいけない。逆にリサーチ/分析に必要な情報は、主としてサイコグラフィック情報であり、個人情報保護法が対象とするデモグラフィック情報ではない。その点に留意し、デモグラフィック情報を集め過ぎないように留意すべきである。

 企業内に存在しない情報のリサーチでは、JIS X 0001の「情報」の定義にあるように、「事実、事象、事物、過程、着想などのものに関して知り得たことであって、概念を含み一定の文脈中で特定の意味を持つもの」として情報を集め、分析できるようにしたい。

顧客との関係構築

 どのような顧客との関係を構築すべきであろうか? 5W1H(How muchを含めると5W2Hか)でいうとWhoである。前章までで顧客が定義できていることと思うが、図4にRFM分析による顧客のマッピング例を示す。

ALT 図4 RFM分析による顧客のマッピング

 例ではRFM分析のF(frequency)、M(monetary)の2軸で分析、マッピングした。すべての顧客が「神様」というわけではない。良い顧客こそが重要であり、自社の収益に貢献している良い顧客(MVC:most valuable customer : 最上位顧客)と、コストのみ掛かる顧客(BZ:Below Zero:ゼロ以下顧客)を同一に扱うということは明らかに不公平である。また、MVCに続く次のランクの客はSTC(Second Tired Customer:次のランクの顧客)である。次に重視すべき顧客という意味である。

 収益性で見た場合、営業コストが少ない顧客層をターゲットとした方がより良い結果となるのは自明である。

 図4にあるようにBZはコストが掛かり、(たとえ契約数などの営業指標上でプラスとなっても)収益上はマイナスである。一方、MVCはコストがほとんど掛からずに多くの契約を得ることができ、大きくプラスとなる。

 まず、収益上大きく貢献するMVCを維持し、BZには売り込まないということが第一歩となる。次にSTCをMVCに格上げするための活動が求められる。最後に見込み顧客を早期にSTC/MVCかその他かBZかに分類し、適切な対応を取るループに組み込んでいかなければならない。

「良い顧客」にとって望ましい行動

 顧客との関係構築をITで実装することを考えると、顧客の定義に従った業務設計がなされ、企業内の誰もが(あるいは関係先も含めて)、「良い顧客」にとって望ましい行動を取れるようにしなければならない。

 第3回、第4回の2回にわたり、顧客に対し、良好な関係を作り出すための組織間連携はどうあるべきか、どのように考え作り上げていくべきか、組織とプロセスやITによる支援という観点から述べる。

筆者プロフィール

營田 茂生(つくた しげお)

日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社

セキュリティサービス本部 シニアコンサルタント


大学時代は構造化プログラミングを学ぶ。日立ソフト入社後,主として保険、証券会社システムのシステムエンジニアリングに従事後,現在は仮想化ビジネスを推進中。



前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ