BPM市場のこれからを読むBPTrends(3)(2/2 ページ)

» 2007年06月18日 12時00分 公開
[著:セリア・ウォルフ, ポール・ハーマンポール・ハーモン, 訳:宇野澤庸弘(日本BPM協会 副事務局長),@IT]
前のページへ 1|2       

プロセスレベル

 リーン・シックスシグマのコミュニティは成長中で、北米よりは海外でそれは顕著だ。しかし、それはリーン・シックスシグマの指導者たちがBPMとSCORの構想に関与することによって変わってくるかもしれない。その構想とは、シックスシグマ実践者たちにとって組織に役立つような拡張をした、強力で新しいツールを提供するというものだ。2007年には、シックスシグマに大きな変化が期待できる。

 同様に、より一般的なプロセス再設計の方法論に対しても、多くの仕事がなされている。その例は、以下のように数多くある。

  • ゲリー・ラムラー(Geary Rummler)のPDL方法論最新版
  • マーティン・オウルド(Martyn Ould)のRiva法
  • ジェンストン(Jeston)とネリス(Neilis)のBPM方法論
  • BPMの第一人者として著名なロジャー・バールトン(Roger Burlton)の協力によるBPTrendsアソシエイツ新方法論

 ビジネスプロセス改善の市場ではさまざまな変化が起こっており、プロセス再設計方法論は新技法の利用をサポートするために進化している。場合によっては、変化はナレッジワーカーによって実行されるプロセスをサポートする必要によって導き出されるかもしれない。また別の場合は、新しい方法論がTRIZやプロセスフレームワークの利用、BPMSをベースとしたアプリケーションの分析と設計のような革新技法をサポートするかもしれない。2007年にはビジネスプロセス方法論について、もっと多くの試みがなされるだろう。

 2006年は、ビジネスプロセスモデリングベンダにとって良い年であった。彼らの規模を考慮すれば、BPMSベンダよりも良い年だったといえよう。このことは、大多数のユーザー企業がプロセスの変更に長期的な視点を取っており、プロセス自動化に備えたプロセス再設計に投資をしている。この傾向は2007年も続くが、主要BPMSベンダは大きな成長を実現するであろう。

 実際のところ、ビジネスプロセスに関する活動のほとんどは、現状ではビジネスプロセスの変更プロジェクトに集中している。先進企業はエンタープライズレベルにフォーカスするかもしれないが、大半の企業は、Web業務の自動化とか、ERPのインストールとか、アウトソーシングと合併に対処するとか、競合会社に後れを取らないように単純なプロセス改善とか、そのような特定プロセスを改善する実務的な問題に集中している。

実装レベル

 BPMSベンダにとって、2006年は良い年であったが、2007年はさらに良い年になろう。しかし、まだ市場としてはアーリーアダプター市場であって、大々的なBPMS市場の爆発は、2008年以前には期待できない。BPMS市場は2003年ごろにスタートし、多くのEAIベンダとワークフローベンダが参入、より包括的なBPMオートメーションというアイデアへ跳躍した。2003年には、BPMSによってビジネスマネージャが自分のビジネスプロセスに関係するソフトウェアの変更を自分自身でコントロールできるようになるという提案に、多くの人々は興奮した。

 その1年のうちにベンダの数は20を超え、注目を争った。2006年ごろには、ほとんどの人はBPMSがITに属するものであり、ビジネスマネージャがITグループと独立して使えるようなツールを目にするまでに何年もあるということを理解するようになっていた。

 2006年にはBPMS市場に重要な企業合併があり、2007年もその傾向はさらに進むだろう。その間、ユーザー企業は新たなBPMS製品を見極める努力を続け、ベンダ企業はM&Aを繰り返しながら最高の総合パッケージを作り出そうと努めるだろう。BPMSがSOAを包含し、ERPアプリケーションと一緒に使われる真のITツールだという認識は、BPMSが誰もが当初予測したよりも複雑で、進化には時間がかかるという一般的な認識につながった。この新興市場におけるマイクロソフト、IBM、BEA、オラクル、SAPといった大手ベンダが自身の進むべき道を探っているのを見ると、この市場は大きく興味深いが成熟した製品が開発されるには、さらに若干の時間が必要だということを感じさせる。

 大規模なプロセスマネジメント・アプリケーションの開発に、その費用を捻出(ねんしゅつ)ないし倹約するために、大企業がBPMSをどのように活用したか、注目すべき事例研究はさほど多く発表されたわけではない。若干の大きな成功例はあるが、そうした注目のBPMSアプリケーション事例は、残念ながらまだ発表されていないのだ。これは初期市場に特有の現象で、真の勃興がまだ来ていないことを示すしるしでもある。われわれは2007年には注意を引き付ける事例がいくつか発表され、そして2008年にBPMSの真の勃興が見られることを期待する。

 2005年はBPMNが多くの注目を浴び、そしてBPMI(ビジネスプロセスマネジメント・イニシアティブ)とOMGの合併は大きなニュースだった。2006年、あまり大きな話題にはならなかったが、BPMNはOMGで改訂された。ある意味で、BPMNは常にBPELやそのほかのBPMS構想と結び付けられていたが、これらの技術に対する関心は、2006年に大きな変化を受けた。突き詰めていえば、2006年は誰もがBPMSとSOAが1つのコインの裏表であることを学んだ年なのだ。さらに、SOAの普及には長い時間を要するということを誰もが知っているように、BPELとBPMSも、いまでは長い時間軸(タイムフレーム)で見られている。

 BPMSがまだ初期のフェイズにあるというもう1つのしるしは、BPMカンファレンスが増加中だということである。同様にビジネスプロセス改善に関して、さまざまな観点から書かれた書籍が急速に増えている。明らかに、「BPMとは何か」を学ぶことに興味を持っているたくさんのビジネスパーソンがいるのだ。2006年には、約12のBPMカンファレンスが米国で開催された。そしてシックスシグマのカンファレンスはそれ以上だった。2007年も同程度のカンファレンスが予定されている。

 2006年で最も大きなBPM-ITカンファレンスは、「Gartner's BPM Conference」だった。2007年の「The Gartner BPM Summit」にはおよそ1000人の参加があるだろう。ここでは、BPMSやSOA、ITに関連したビジネスプロセス改革の構想について学ぶことができる。「Shared Insights' BPM Conference」(BPTrendsが協賛)は規模的には小さいが、BPMについて学びたいビジネスマネージャを多数引き付ける。ISSSPとIQPCは、恐らく米国で最も優れたシックスシグマ・ミーティングを提供するだろう。サンフランシスコ・ベイエリアで7月に開催予定のOMGのBPMカンファレンス「Think Tank 2007」は、BPM標準の動向について学べる場所だ。

 BPTrendsは、2003年1月に開設した。以来、われわれはできる限りのことをやってきた。メンバーシップは2万に及び、国際的にもサービスを広げ、BPM業界の多くのリーダーに寄稿を依頼し、500件以上の論文記事を掲載している。2006年の上半期は、ヒット数が月100万であったが、今日では200万ヒットを超え、なお成長を続けている。われわれのスポンサー、著者、メンバー、読者が関係している多彩なBPMイニシアティブには感心させられるばかりだ。2006年がわれわれの最良の年になったことを感謝し、2007年がさらに刺激的な成長の年になることを楽しみにしている。

 では、また。

 セリア・ウォルフ、ポール・ハーマン

Original Text

Celia Wolf, Paul Harmon: "The Year Ahead." Business Process Trends, Volume 5, Number 1, January 23, 2007


著者紹介

セリア・ウォルフ(Celia Wolf)

ビジネスプロセスに関する情報提供を行うBusiness Process Trends(BPTrends)の創立者/発行人。Enterprise Alignmentの創立者/CEO。

ポール・ハーモン(Paul Harmon)

ビジネスプロセスに関する情報提供を行うBusiness Process Trends(BPTrends)の創立者/エグゼクティブエディター。Enterprise Alignmentの創立者/チーフコンサルタント。


訳者紹介

宇野澤庸弘(うのざわ つねひろ)

日本BPM協会 副事務局長


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ