
不正打刻は、企業の信頼や労務環境に大きな影響をもたらします。本記事では、よくある不正打刻の手口やその背景、放置した場合のリスクを詳しく説明し、客観的な証拠を残せる勤怠管理方法や防止策について提案します。健全な組織を維持するために、不正打刻対策の重要性を理解し、すぐに実践できるポイントを紹介します。
この1ページでまず理解!勤怠管理システムの主な機能、メリット/デメリット、選定ポイント|人気・定番・おすすめの製品をチェック
目次
不正打刻とは?
不正打刻は、タイムカードやICカード、勤怠システムで勤怠を記録する際に、事実と異なる出退勤情報を意図的に入力し、働いていない時間を働いたように見せるなど、不当な利益を得る行為を指します。遅刻・早退の隠蔽や残業時間の水増しなど、目的はいずれも不正な利得です。
よくある不正打刻のパターン
現場で頻出する手口を知ることが、まず有効な自己点検につながります。
| 代理打刻 | 本人不在時に同僚が代わりに打刻する行為。 |
| カラ残業(空残業) | 退勤をわざと遅らせる、または打刻のためだけに戻って残業代を水増しする行為。 |
| 休憩時間の不正申告 | 休憩を取っているのに「働いていた」と申告して労働時間を水増しする行為。 |
| 出退勤時刻の改ざん | 紙の書き換えやシステム修正機能を利用し、実際と異なる時刻を入れる行為(管理者が過少申告させるケースも含みます)。 |
| 打刻漏れ偽装 | 遅刻や残業後に打刻をせず、後日「忘れた」と自己申告で都合よく補正する行為。 |
いずれも、企業秩序を乱し、また重大な法的責任に発展する可能性があります。
不正打刻と単なる打刻ミスの違い
不正打刻と打刻ミスの最大の違いは「意図」の有無にあります。
労務管理上の単発のうっかりミスと、利益を得る目的で繰り返される偽装行為とは明確に区別されます。前者は是正指導で足りる場合が多い一方、後者は悪意ある継続的な不正とみなされ、就業規則違反による懲戒処分の対象となり得ます。さらに、詐欺的な意図を伴う場合には刑法第246条(詐欺罪)に発展する可能性も否定できません。
実務上の重要なポイントは、従業員が「ミスだった」と主張した場合に、企業側が客観的に「意図性」を示せるかどうかです。しかし、手書きの記録や修正が容易な管理方法では、証拠能力が弱く立証は困難です。
そのため、「誰が・いつ・どこで」を客観的に残せる仕組みの導入が求められます。例えば、生体認証やGPSによる打刻、PCログの自動取得など、改ざん困難な記録を残せる仕組みは極めて有効です。
こうした仕組みは不正の抑止だけでなく、正当な懲戒処分の根拠を支え、万一の不当解雇訴訟においても企業を守る証拠保全の役割を果たします。結果として、企業のコンプライアンス体制を強化し、健全な労務環境の維持に直結します。
Web打刻の活用と不正リスク低減については「Web打刻で勤怠管理を効率化! 今すぐ知りたいメリット・機能比較・システムの選び方」をご覧ください。
併せてチェック!Web打刻で勤怠管理を効率化! 今すぐ知りたいメリット・機能比較・システムの選び方
不正打刻が起きる背景と企業側のリスク
なぜ現場で不正が起きるのか。仕組み・文化・意識の面から原因を押さえると、対策の精度が上がります。
アナログ管理の限界
紙のタイムカード、手書き出勤簿、Excel自己申告といった方法は、代理打刻や後からの書き換えを物理的に防ぎにくい構造です。リアルタイム把握が難しく、月末集計まで問題が残留しやすい点も弱点です。人事は打刻漏れや計算ミスの修正、給与システムへの転記など手作業が多く、ミスの温床にもなります。根本的に「信用ベース」に依存し、客観的検証が難しいことがアナログ管理の課題です。
デジタル移行の基本・基礎については「クラウドタイムカードとは? メリット・導入方法・主要サービスを徹底解説」をご覧ください。
不正打刻の具体的な例と影響
現場で起きやすい例をご紹介します。
- 代理打刻による勤務時間のごまかし
- 残業代の水増しと管理者の記録改ざん
代理打刻による勤務時間のごまかし
遅刻・早退時に同僚が代わりに押す代理打刻は、一見「助け合い」に見えても、勤務記録の偽造に該当します。
労働実態のない時間に賃金が支払われる直接の損失だけでなく、ルールを守る人ほど損をする不公平感が広がり、士気の低下を招きます。小さなごまかしが、やがて組織の信頼を蝕みます。
残業代の水増しと管理者の記録改ざん
従業員が残業を水増しして賃金を得る行為は、刑法246条の詐欺罪に問われる可能性があり、成立すれば「10年以下の懲役」という重い罰則の可能性があります。民事でも不正支払分の返還請求が可能です。
一方、管理者が記録を改ざんして賃金を支払わない行為は労基法違反で、30万円以下の罰金や、悪質な場合は6カ月以下の懲役が科されることがあります。労基署の臨検や是正勧告、悪質な事案では企業名公表の可能性もあり、信用失墜のダメージは大きいものです。未払いが裁判で認定されれば、未払い分と同額の付加金の支払いを命じられる場合もあり、財務への打撃は無視できません。
不正打刻を未然に防ぐためのルール整備
テクノロジーに先立ち、組織としての明確な意思表示とルールが土台になります。曖昧さをなくし、誰もが同じ基準で行動できる状態を作りましょう。
- 勤怠ルールの明文化と従業員への説明
- 就業規則への反映とペナルティ規定
勤怠ルールの明文化と従業員への説明
就業規則や勤怠規程に、次のポイントを具体的に記しましょう。
- 打刻の原則:業務開始・終了時は「本人が」打刻する。
- 打刻ミス時の手続き:誰に、いつまでに、どの方法で報告・修正依頼するか。
- 禁止事項:代理打刻、無許可の手書き修正、意図的な時刻ずらし等を明示。
- 特殊な勤務形態:直行直帰・在宅・出張時の報告ルール。
- 不正発覚時の対応:調査手順と懲戒の考え方を周知。
ルールは作って終わりではありません。入社時研修、社内メールや掲示での定期喚起、朝礼での声かけなど、地道に浸透させましょう。
就業規則への反映とペナルティ規定
ルールは就業規則に正式に盛り込み、法的な有効性を持たせます。処分の種類と基準も明確化しましょう。
- 戒告・譴責(けんせき)、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇・懲戒解雇
実際の適用では、意図や常習性、損害の大きさを総合的に考え、社会通念上妥当な重さにします。弁明の機会を与えるなど、適正手続きも欠かせません。
より詳しく“有休5日取得義務”の運用は「有休管理(年次有給休暇管理)システムとは? 主な機能と選定時の注意点、導入すべき企業」をご確認ください。
詳細を確認!“有休5日取得義務”の運用方法
勤怠管理システムで不正打刻の課題をまとめて解決する
人の善意に頼るアナログ管理には限界があります。改ざん機会をシステム的に減らし、管理を効率化するために、デジタルの活用が有効です。
2019年の労働安全衛生法改正では、企業に「客観的な方法」での労働時間把握が求められました。
タイムカードやICカード、PCログ等が例示されますが、客観性のレベルに差があります。ICカードは貸し借りの余地があり、手書きは改ざんが容易です。
一方、生体認証やPCログは個人の存在や活動と結びつくため、客観性が高い記録と言えます。
IPO準備や監査対応が必要な企業では、打刻とPCログの突合など、より厳密な運用が求められる場面も増えています。
本人認証機能で代理打刻を防ぐ
生体認証(指紋や顔、指静脈など)を利用することで、カードの貸し借りができず、代理打刻を実質的に不可能にすることができます。
また、ICカード認証では、誰のカードがいつ使われたかを記録するため、不正のリスク軽減につながります。
GPS打刻は、スマートフォンやタブレットの位置情報とあわせて記録することで、直行直帰や在宅勤務でも客観性を担保できます。さらに、PCログ取得機能を用いることで、ログオンやログオフの時刻を自動で記録し、自己申告した時間との乖離をチェックすることが可能です。
生体認証の勤怠管理システムについては「生体認証で運用する勤怠管理システム導入ガイド」もご覧ください。
給与計算を連携させるメリットについては「給与計算と勤怠管理を連携させるメリット」でもご紹介しています。
異常検知やアラート機能の活用
優れたシステムは、単に記録を行うだけでなく、「監視役」としての機能も果たします。例えば、打刻漏れや申請漏れが発生した場合には、本人や上長に自動で通知が送られることで、月末にまとめて修正を行うような事態を防ぎます。
また、長時間労働が発生しそうな場合には、36協定の上限に近づく段階で警告が発せられるため、過重労働を未然に防止できます。さらに、PCのログと申告時間に一定以上の差(例えば30分超)がある場合には、その理由を確認するよう促し、不要な残業の抑止にも貢献します。加えて、年5日の有給取得義務が未達の従業員には通知が行われ、計画的な取得の促進も行えます。
これらの機能により、管理者は従来の事後チェック中心の運用から、問題を未然に防ぐ予防的な運用へとシフトすることができるのです。
不正打刻防止向け勤怠管理システム8選
不正打刻を効果的に防止するためには、自社の業態や働き方、そして解決したい課題に適した勤怠管理システムを選ぶことが重要です。ここでは、特に「不正をさせない仕組み」に強みを持つ9つのシステムを、その特徴的な機能とともに紹介します。(製品名 abcあいうえお順/2025年9月時点)
Dr.オフィスLookJOB2
スマートフォンからのGPS位置情報付き打刻機能を核とし、特に外回りや現場作業が多い従業員の勤怠管理に適しています。打刻時に「どこで」業務を開始・終了したかが記録されるため、直行直帰時の不正な時間申告を効果的に抑制します。最大の特徴は「人数無制限定額制」という料金体系で、従業員数が多い企業でもコストを気にせず全スタッフに導入できる点が魅力です 。また、災害時に従業員の安否を確認できる機能も統合されており、勤怠管理とBCP(事業継続計画)対策を両立させたい企業にとって価値の高い選択肢です。



















