
働き方改革の流れに合わせて、勤怠管理のルールが次々と更新されています。年5日の有給取得義務や残業の上限、労働時間の客観的把握など、どれから手を付けるか迷う場面が増えています。
本記事では、直近の改正点を要点から解説し、違反を避けるための実務手順を具体的に示します。派遣社員と管理職の取り扱い、2025〜2026年に見込まれる動向、記録や保存のコツまでを一気に確認できます。
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目次
2025〜2026年の法改正で企業に求められる勤怠管理・労務関連の対応
2025年から2026年、直近の勤怠管理や労務体制に影響を与える法改正を改めて確認しましょう。働き方改革の流れの中で、育児や介護と仕事の両立支援、長時間労働の是正など、企業が求められる管理水準は年々高まっています。ここでは、実際にどのような変更が予定されているのか、ポイントを押さえていきます。
育児・介護休業法の改正(2025年4月〜段階的に施行)
2025年4月から段階的に施行される育児・介護休業法の改正は、従業員が家庭と仕事を両立しやすいよう制度を拡充する内容です。今回の主な変更点は次の通りです。
残業免除の対象拡大
2025年4月1日から、残業免除を請求できるのが「3歳未満の子どもを育てている従業員」から「小学校就学前の子どもを持つ従業員」にまで広がります。この変更により、該当者が大幅に増え、企業は人員配置や業務分担の見直しが求められるようになります。
短時間勤務の代替措置にテレワーク追加
3歳未満の子どもを育てる従業員向けの短時間勤務制度が難しい場合、代替策としてテレワークが正式に認められます。通勤の負担を減らし、より柔軟な働き方をサポートできるようになります。
柔軟な働き方を実現するための措置の義務化
2025年10月1日からは、小学校就学前の子どもを養育する従業員に対して、「始業時刻の変更」「テレワーク」「短時間勤務」などの制度のうち、企業は「少なくとも二つ以上の措置を整備」し、労働者が「その中から一つ選択」できる仕組みを義務付けます。今後は単なる“努力義務”ではなく、法的な義務として求められます。
男性の育児休業取得率の公表義務拡大
これまでは従業員1,000人超の企業だけが対象でしたが、2025年4月1日からは300人超の企業にも公表義務が広がります。男性育休の取得が企業評価にも影響する時代となります。
子の看護休暇・介護休暇の要件緩和
従来、労使協定で「入社6カ月未満」を対象外とできましたが、この除外規定が廃止されます。介護休暇、子の看護休暇も2025年4月1日からとなっており、これによって入社直後でも休暇取得がしやすくなります。
テレワーク時の勤怠の基本は「テレワークに有効な勤怠管理の方法|おすすめの打刻・管理ルール」をご覧ください。
雇用保険法の改正(2025年4月施行)
2025年4月からは、雇用保険法も改正され、子育て期の経済支援が新たに導入されます。具体的には次の2つの給付金がスタートします。
育児時短就業給付の創設
2歳未満の子を養育するために所定労働時間を短縮して就業し、その結果賃金が低下した場合、育児時短就業中の各月に支払われた賃金額の10%が支給されます(賃金と給付の合計が時短就業開始時の賃金月額を超えないよう調整。支給上限・下限あり)。
出生後休業支援給付の創設
子どもの出生後8週間の対象期間内に、原則、被保険者と配偶者がそれぞれ通算14日以上の育児休業(産後パパ育休を含む)を取得する等の要件を満たした場合、休業開始時賃金日額×休業日数(上限28日)×13%が支給されます(配偶者が「育児休業を要件としない場合」に該当するなどの例外あり)。
労働基準法の見直し案(有識者による提言)
2025年1月の労働政策審議会では、現在の働き方に合わせて以下のような内容で労働基準法に見直しを考慮すべきであると提言が出ています。
14日以上の連続勤務禁止の新設
「13日を超える連続勤務は禁止」という新たなルールが提言されました。これにより、心身の健康被害を予防する仕組みが強化されます。同時に災害等の例外措置や安全上の代替措置についても検討すべきであるとしています。
週単位の「法定休日」運用の見直し
従来の連続勤務日数を多くできてしまう「4週4休」ではなく、「2週2休」など、連続勤務の最大日数を減らしていく措置をとるべきであるとの提言がありました。
その他の見直し点
副業や兼業時の割増賃金の算定ルールを簡素化したり、テレワークのときにフレックスタイム制を柔軟に適用しやすくする案など、時代に合わせた働き方へ対応する内容が挙げられています。
直行直帰や在宅を含む位置情報管理は「勤怠管理にGPSを活用するなら? 現場・リモート・直行直帰をラクにする管理方法を解説」をご確認ください。
近年の労働基準法改正のポイント
ここでは、これまでに施行された主要な労働基準法改正の内容を振り返ります。これらはすべて現在の勤怠管理の基本となっている重要なルールです。
- 有給休暇:年5日取得義務/管理簿作成・3年保存(罰則あり)
- 残業:原則45時間/月・360時間/年、特別条項でも厳格上限(年720時間、2〜6カ月平均80時間、月100時間未満)
- 把握:PCログ・IC・タイムカード等で客観的に始終業を記録
- 割増:月60時間超は中小含め50%以上に統一(原価・予算反映が必須)
有給休暇の5日取得義務
2019年4月から、年10日以上の有給休暇が付与される従業員は、年5日以上の取得が義務付けられました。正社員だけでなく、パートタイム労働者や有期雇用労働者、管理職も含まれます。
年次有給休暇の管理は、取得状況を記録した「年次有給休暇管理簿」を作成し、3年間保存する必要があります。違反すると従業員1人につき30万円以下の罰金が科される可能性があります。企業には、確実に取得させる仕組みと管理体制の整備が求められています。
残業時間の上限規制
時間外労働については、月45時間・年360時間までが原則となりました。臨時的な事情があって、特別条項付き36協定を締結していれば「年720時間以内」や「2〜6カ月平均80時間以内」「月100時間未満」など、複数の厳格な上限が設けられています。
違反した場合、企業や責任者に6カ月以下の懲役や30万円以下の罰金が課せられるリスクがあります。特に複数月平均の規制は見落としやすいので、継続的な管理が不可欠です。
労働時間の客観的把握
長時間労働や未払い残業を防ぐため、労働時間の客観的把握が義務となっています。タイムカードやICカード、PCの利用記録など、自己申告だけに頼らず、客観的な記録で始業・終業時刻を管理しなければなりません。
出張や直行直帰の際も、現場確認や代替的な記録が必要です。労働時間を適切に把握していない場合、労働基準監督署から是正勧告を受ける場合もあります。
割増賃金の引き上げ
2023年4月からは、中小企業も含めて月60時間を超える時間外労働に対しては50%以上の割増賃金が義務付けられました。それまで大企業のみだった規定が、企業規模を問わず一律に適用されるようになりました。
これにより、長時間労働のコストが増え、時間管理の厳格化が一層重要になっています。
比較と導入手順は「〖2025最新〗勤怠管理システムのおすすめツールを徹底比較」をご覧ください。
派遣社員や管理職の勤怠管理
派遣社員や管理職は、正社員とは違った勤怠管理のルールが存在します。管理を誤ると法違反につながるため、しっかりと理解しておきましょう。
派遣社員の管理ポイント
派遣社員の管理は、「派遣先」と「派遣元」で役割が分かれます。
- 出退勤記録や残業管理は派遣先企業が担当します。タイムカードの設置や残業指示、勤怠データの派遣元への連絡が求められます。
- 一方で、給与計算や有給休暇の付与は派遣元企業の役割です。派遣元が最終的な管理責任を負います。
- 労災発生時には、派遣先・派遣元双方が報告義務を持つため、連携が重要です。
派遣先は日々の労働時間管理、派遣元は給与や休暇管理を担当する、という役割分担を理解し、トラブルを防ぐ運用が求められます。
管理職も対象になる勤怠管理
「管理監督者は勤怠管理不要」というのは誤りです。経営層・管理職であっても、健康を守るための労働時間の把握は必要です。労働基準法上の管理監督者は残業代支払いの対象外ですが、労働安全衛生法に基づき労働時間の状況把握が義務付けられています。
もし長時間労働が続く場合、管理職も医師面談を受ける義務があります。また、「名ばかり管理職」で実態が伴わない場合、残業代を支払わないのは明確な違法です。企業は、役職名だけで判断せず、実態に即した勤怠管理と賃金支払いを行う必要があります。
法律改正に対応する勤怠管理の方法
法改正の流れに確実に対応し、労務リスクを回避するには、勤怠管理のやり方そのものを見直すことが重要です。ここからは、実務で守るべき3つの基本原則を確認します。
- 1分単位の客観的記録(PCログ・IC・生体・GPSなど)に統一
- 年次有給休暇管理簿の運用(付与日・取得日・残日数を常時可視化)
- 上限規制のリアルタイム監視(45時間/月・100時間未満・複数月平均80時間のアラート)
労働時間を正確に記録する
すべての勤怠管理の基本は、労働時間を1分単位で正確に記録することです。15分単位での切り捨てや切り上げは、労働基準法違反になるリスクがあります。
客観的な管理手段として、タイムカードやICカード、PCのログなどを使うことが法律で求められています。これにより、労使トラブルが起きた際にも、企業側の正当性を証明する大きな根拠となります。
有給休暇取得の管理
年5日の取得義務化以降、有給休暇の管理は「付与日」「取得日」「残日数」まで明確に記録し、年次有給休暇管理簿として保存する必要があります。定期的に取得状況を確認し、未取得者には計画的な取得を働きかける体制づくりが欠かせません。
長時間労働の監視
残業時間の上限を守るためには、月末の集計ではなく、リアルタイムでの監視がポイントです。勤怠管理システムを活用し、「月45時間」や「月100時間」に近づいた時点で本人・上司・人事部にアラートを出すことが有効です。
また、「2〜6カ月平均80時間以内」という規制もシステムで自動的に確認し、違反を未然に防ぐ工夫が重要です。深夜労働や休日労働の頻度もあわせてチェックし、従業員の健康を守る体制づくりを進めましょう。
法令対応・36協定の考え方は「〖2025最新〗労務管理システムのおすすめツールを徹底比較」をご覧ください。
労働関連法の順守に向けて勤怠管理システムを導入するメリット
現代の勤怠管理は高度化・複雑化しているため、手作業やExcelだけでは対応しきれなくなっています。ここで、勤怠管理システムを導入することで得られる主なメリットをまとめます。
- 残業時間を自動で集計できる
- 有給休暇の取得状況を追跡できる
- 法改正に即時対応できる
- 労務リスクを軽減できる
- 業務効率を向上できる
残業時間を自動で集計できる
勤怠管理システムを使うと、従業員ごとの残業時間がリアルタイムで可視化されます。上限規制を超える前に自動で警告を出せるため、業務の見直しや残業抑制の具体的なアクションが取りやすくなります。
有給休暇の取得状況を追跡できる
システムが自動的に有給休暇の付与や取得状況、残日数を管理します。年5日取得義務を満たしていない従業員にはアラートで通知ができ、罰則リスクも減らせます。
法改正に即時対応できる
クラウド型の勤怠管理システムなら、法改正があるたびにベンダー側がシステムをアップデートしてくれます。複雑な設定変更も不要で、常に最新の法律に準拠した運用ができる点が強みです。
労務リスクを軽減できる
PCログやICカードなどの客観的な記録データが保存されるため、監督署調査や訴訟時にも証拠として活用できます。手作業よりも正確なデータ管理ができるので、トラブル回避につながります。
業務効率を向上できる
勤怠データと給与計算が自動で連携するため、転記や集計の手間が大幅に削減されます。シフト作成や人員配置もシステム上で一括管理でき、管理者の業務負担を軽くできます。
紙からの移行は「タイムカードはなぜ時代遅れ? Web・アプリでの勤怠管理へ切り替えるメリット|タイムカードの電子化」をご覧ください。
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