
労働時間の管理は企業が守るべき法令順守の要です。特に近年、「労働時間は1分単位で管理するのが原則」のルールが広く浸透するようになり、従業員に正確な賃金を支払うために欠かせない観点といえます。しかし、従来の15分や30分単位の切り捨て計算とは異なり、1分単位管理には法的根拠や具体的な運用ルール、例外となる端数処理の条件、システム導入時の注意点など知っておきたい実務ポイントが多くあります。
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目次
労働時間を1分単位で計算する理由
労働時間を1分単位で管理する運用は、働いた分だけ正確に賃金を支払うための法的要請によるものです。従業員の労働時間を分単位で記録し、適切な賃金計算を実現することが企業には求められています。
- 1分単位管理とは何か?
- 従来の丸め計算との違い
最新の法令動向は「勤怠管理における法改正〖2025〜2026年度版〗」をご覧ください。
1分単位管理とは何か?
1分単位管理とは、出勤・退勤・休憩開始と終了のすべての勤怠データを1分単位で正確に記録し、そのまま賃金計算に反映させる運用です。
タイムカードや勤怠管理システムを用いて、従業員が打刻した時刻を分単位で集計します。17時9分に退勤したならば17時で切り捨てず、プラス9分の時間もきちんと労働時間として計算します。15分単位や30分単位で切り捨てたり丸めたりする方法は、原則として認められません。こうした分単位の管理は、賃金計算の正確性を高めるために欠かせないと言えます。
従来の丸め計算との違い
かつて多くの企業では、給与計算の手間を減らす目的で、労働時間を15分や30分単位に丸めて集計していたこともありました。しかし現在では「賃金全額払い」の原則が重視されており、1分単位での管理が標準となっています。
技術の進歩により、勤怠管理システムの導入が進み、分単位での正確な集計が容易になったことも背景にあるでしょう。法令違反のリスクを避けるためにも、丸め計算の廃止と1分単位管理への移行が企業に求められています。
労働基準法における1分単位管理の根拠
労働基準法には、労働時間や賃金の支払いに関して明確なルールが定められています。1分単位管理の必要性も、こうした法律の規定に根ざしています。
賃金全額払いの原則とは
労働基準法第24条には、賃金はその全額を労働者に支払うことが義務付けられています。ここでいう「全額」には、従業員が働いたすべての時間が含まれ、たとえ1分でも労働が行われた場合には、その分の賃金を支払う必要があります。労働時間を任意の単位で切り捨てて集計すると、働いた分の賃金が支払われず「賃金未払い」となる恐れがあるため注意が必要です。
1分単位で管理しない場合のリスク
1分単位管理を怠り、違法な切り捨てや丸め計算をしていると、企業にはさまざまなリスクが発生します。主なリスクは次の通りです。
- 労働基準法違反により、是正勧告や罰則の対象になる
- 従業員から過去の未払い賃金を請求されるリスク
- 社会的信用の低下や、離職率の増加につながる
企業が法令を順守し、健全な労働環境を維持するためには、1分単位での管理が不可欠です。
打刻の具体策は「Web打刻で勤怠管理を効率化! 今すぐ知りたいメリット・機能比較・システムの選び方」をご覧ください。
1分単位管理の対象範囲と適用例
1分単位での勤怠管理は、特定の労働時間だけでなく、すべての勤怠管理に適用されます。企業は、通常勤務だけでなく残業や深夜勤務、休日労働においても分単位での集計が必要です。
通常勤務・残業・深夜労働の扱い
通常の勤務時間はもちろん、残業・深夜・休日労働に関しても1分単位で集計することが義務付けられています。遅刻や早退についても同様に、実際の分単位で賃金控除が行われる必要があります。割増賃金の計算(時間外・深夜は1.25倍以上)も、すべて分単位で正確に算出します。
休憩時間の付与ルール
労働基準法第34条では、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を「途中で」与えることが義務付けられています。たとえば、「6時間1分」働いた場合は、45分の休憩を与えなければなりません。休憩時間は労働時間に含めず、分単位で差し引いて賃金を計算します。こうしたルールを守るためにも、分単位の正確な管理が欠かせません。
ルール周知と規程整備は「今さら聞けない人事労務管理の基本」をご覧ください。
例外的な端数処理が認められるケース
原則として1分単位での管理が求められますが、厚生労働省の通達により、一定の条件下でのみ「端数処理」が認められています。
残業・休日・深夜の月集計での例外
月単位での時間外・休日・深夜労働の合計に1時間未満の端数が出た場合は、次の条件で丸め処理が可能です。
- 30分未満は切り捨て、30分以上は1時間に切り上げて集計する
- 日単位での丸め処理は不可
- 切り捨てだけでなく、切り上げも併用することが条件
この例外処理を適切に行うためにも、まずは日々の労働時間を1分単位で正確に記録することが大前提となります。
| 集計単位 | 端数の扱い |
| 1日単位 | 丸め・切り捨て不可 |
| 1カ月単位(時間外等) | 30分未満は切り捨て、30分以上は切り上げ |
従業員に有利な端数処理
労働基準法は労働者に不利な扱いを禁じていますが、反対に従業員に有利な処理(たとえば出勤時刻の切り捨て、退勤時刻の切り上げ)は認められる場合があります。こうした運用を行う際は、必ず就業規則に明記し、全従業員に周知することが求められます。なお、一方的な切り捨てのみの運用は認められていません。
月次集計の実装イメージは「エクセルで行う勤怠管理|便利なExcel関数」をご覧ください。
1分単位管理における就業規則と社内体制の見直し
1分単位での勤怠管理を実現するためには、社内規定や管理体制の見直しが重要です。
就業規則と法律の優先順位
企業ごとに定められた就業規則は、労働基準法などの法律よりも下位の位置づけとなります。法律に反する規定があれば、その部分は無効となり、必ず法定基準が適用されます。自社の就業規則に、1分単位管理の原則に反する「丸め計算」の記載が残っていないか、速やかに確認・修正する必要があります。
勤怠管理システム導入のポイント
1分単位での勤怠記録や集計、例外的な端数処理(月単位の切り捨て・切り上げ)をミスなく運用するには、勤怠管理システムの導入が効果的です。システムを導入する際には、次のポイントを確認しましょう。
- 自社の勤務体系や就業規則と整合性があるか
- 打刻ミス・不正打刻が発生した場合の対応フローを確立しているか
- 就業規則にシステム運用ルールを明記し、全従業員へ周知しているか
失敗回避の要点は「勤怠管理システムのデメリットと導入時の課題」をご覧ください。
1分単位の勤怠管理サポートする勤怠管理システム8選
ここでは、1分単位での勤怠管理に対応した代表的な勤怠管理システムを8つご紹介します。各システムの特徴を比較して、企業の業態や規模に合わせた選定に役立ててください。(製品名 abcあいうえお順/2025年12月時点)
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