P2Pの世界で、タイトルに【合法】と付いたファイルがやりとりされていたら、それは「わざアリ」の動画かもしれない。
NTTコミュニケーションズと松竹が、「WinMXなどで自由な交換を認める」とうたう動画コンテンツ、わざアリ(記事参照)が提供開始されてから、約3カ月が過ぎた。P2Pユーザーからの反応は上々で、流通ファイルに広告を入れ込む“次期フェーズ”にも移行できそうな状況だという。
NTTコミュニケーションズの先端IPアーキテクチャセンタ、第1アーキテクチャPTの小柴聡氏に、サービスの手ごたえなどを聞いた。
わざアリは、ことわざ、慣用句など“言葉にちなんだ雑学”を、女性タレントが解説する内容の映像ファイル。ポイントは、ファイルの暗号化、コンテンツIDの付与、流通経路の把握といった各種技術を組みこんでいることだ。これにより、P2Pネットワークでの流通を許容し、配信側のコストダウンを狙っている(詳細は(2003年11月の記事参照)。
小柴氏はサービス開始後、特にトラブルが起きず、目立った批判、問い合わせもなくアクセスが増加したと話す。
「12月は、ファイルに対して19.5万件のアクセスがあった。1月も、18万件アクセスがあり、予想外に満足のいく数字だ」(同)。
小柴氏個人としても、OCNの1.5Mbpsの回線を用意し、WinMX上でファイルの交換を試みたという。この結果、「12月末まで公開していたが、毎日50〜100人のユーザーが訪れ、ほぼ全員が動画ファイルをキューに入れて持っていってくれた」。
中には、趣旨に共感したユーザーが宣伝役を務めてくれたケースもあったという。ひとまずは、既存のP2Pコミュニティから受け容れてもらえたようだ。
小柴氏は、P2Pネットワークでわざアリのファイルは、タイトルに【合法】というキーワードが付いて流通しているようだと話す。
実は、昨今の違法なP2Pユーザー摘発もあり(記事参照)、一部のP2Pコミュニティで“違法ファイルばかりでなく、合法ファイルも流通させよう”とする気運が高まっている。合法ファイルとして考えられるのは、「自主制作映像」「自作のフラッシュアニメ」「ポエム」などがあるようだが、わざアリのファイルもこの中の1つとして認識されているようだ。
「『P2Pを合法的に利用しよう』と呼びかけるページから、リンクを貼ってもらった」(小柴氏)。
この動きが、どの程度広まりを見せるのかは不明だ。ただ、P2Pをコンテンツ配信に利用しようとする企業は、NTTコミュニケーションズだけではない(記事参照)。今後、これらのコンテンツプロバイダが提供するファイルが、どの程度【合法】というキーワードで流通してくるのか、興味深いところだろう。
小柴氏は、今後の展開について「まずは本来の姿である“ファイルに広告を付与する”ところから始めたい」と話す。
わざアリでは、当初は試験段階との位置付けで、ユーザー情報の取得、広告表示などは行っていなかった。しかし、上述のような成果に手ごたえを得たことから、次のステップに移りたい考えだ。
「この成果をもって、営業にまわる。2月13日には、松竹が配給する映画である『ドラッグストア・ガール』のバナーを、ファイルに加えている」。
小柴氏は、今回の試みでは松竹側も、「費用対効果で考えて、非常に満足」との評価だったと話す。実際、大規模なストリームサーバを用意すれば、企業側のコストは1桁違っただろうという。現在は、話を聞いたほかのコンテンツプロバイダからも、引き合いがきている状況だとした。
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