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音質調整は“職人技”、ソニー「DA7000ES」ができるまでインタビュー(4/4 ページ)

» 2004年11月12日 15時22分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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 ソニーが、i.LINKの接続保証するモデルは、同社製の「SCD-XA9000ES」と「SCD-DR1」のみとのことだが、前回は確認できなかったDVDオーディオに関しても、今回は貸し出し機材で行うことができた。パイオニアの「DV-S969AVi」を接続したところ、ともかくi.LINK経由で音は出てきた。手元にあるDVDオーディオソフトが少ないためすべてを確認はできないが、きちんと動作し、i.LINKの同期転送モード(H.A.T.S)も利用できる。

 ドルビーデジタル、DTSデジタルなどS/PDIF端子で伝達する信号も、同じくi.LINKでつながる(ただし映像との同期が必要なため、H.A.T.Sは無効となる)。DA9000ESでも、S/PDIF端子で伝達可能な信号はi.LINKが利用可能だったが、i.LINKを選ぶと映像がオフになるため使いにくかった。前回のレポートにも書いたように、i.LINKボタンで任意の映像入力に対してi.LINK音声を組み合わせることが可能になったことで、この機能が生きてきた。カスタム設定で、任意のビデオ入力にi.LINKをアサインしておくこともできる。

 加えてデジタル放送で使われるAACの音が非常に良いことも付記しておきたい。DA9000ESも、他社製同クラスのAVアンプよりもAACの音が良かった。AACの音質は、地上デジタル放送の開始と前後して、放送局側の機器が入れ替わったのか音質が急激に改善されたことがあるが、デコードプログラムに何らかの工夫があるのだろうか?

 佐藤氏は「同じDSPで同じプログラムを用いてAACのデコードを行う場合でも、物理的な回路構成で音が変化します。AACのデコードはドルビーデジタルやDTSよりDSPの負荷が重いためか、電源に起因した音質劣化が起こりやすいのです。放送されるAACの質が高まってきたこともあり、AACの高音質化に取り組んだ成果と考えてください」と話す。

熟成された弟分

 全国の弟さんたちには申し訳ないが、“○○の弟分”といった言い方をするとき、“コストパフォーマンスはいいが、全体的にはやっぱり落ちる”といったイメージを持つ人が多いのではないだろうか。DA7000ESも、製品の位置付けからはDA9000ESの弟分という言葉が当てはまる。

 しかし、あらゆる面で少しずつ劣るのではない。品質面でも部分的には超えている。しかも、DA9000ESでの反省を踏まえた上で、細かな使いやすさについて再検討が行われた“熟成された弟分”だ。

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 ここまで読んできて、やや“絶賛調”の文章が多すぎると感じたかもしれないが、本機に関しては不満が本当に少ない。使い込んで行った時、あるいは他機種と同環境で比較した時にどのような結論になるかはわからない。だがDA9000ESに興味はあったが手が出なかった、あるいは手頃なマルチチャンネルのデジタルアンプを待っていた、などの人たちには、文句なしにお勧めしたい製品に仕上がっている。

 あえて本機に不足している部分を指摘するとすれば、それは他社にはあってソニー製AVアンプにはない自動音場補正が挙げられる。過去にそれらの機能を評価した結果を踏まえると、自動音場補正機能は必須というわけではない。特にイコライザの自動設定は、思わぬ弊害をもたらすこともあるからだ。

 ただし、距離や位相、音量レベルなどの補正は、マイク測定で自動的に行う方がずっとやりやすい。ハイエンド機の場合、ユーザー側もそれなりの知識を持っていることが想定できるが、本機の場合、マルチチャンネルオーディオのセッティングに関してあまり知識を持たない層も購入する。

 そうした意味では、DA9000ESよりもDA7000ESの方が、自動音場補正へのニーズは高いといえる。オーディオアンプとしては非常に高いレベルに達している本機だが、手軽に購入してすぐいい音を楽しみたいカジュアルなユーザーを獲得するためにも、この点には取り組んでいくべきだろう。

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