ソニーから発売されたミッドレンジのAVアンプ「TA-DA7000ES」。ソニーのデジタルアンプS-master Proを搭載したハイエンドモデル「TA-DA9000ES」のローコスト版だが、デバイス能力はむしろ向上している部分が多く、その価格の安さ(DA9000ESの半分以下)もあって、ミドルレンジのAVアンプを狙うユーザー層から注目を集めている。
DA7000ESに関しては、発表時にチューニング途中の製品を試聴し、紹介させてもらった(関連記事)。もちろん、製品としての仕上がりにも注目したいが、「今後、上位機種に迫る音質にまで熟成させる」と話していただけに、チューニング途中バージョンからの変化がどれほどのものになるのか? という点にも注目したい。さらに製品の貸し出しをお願いし、前回のレポートでは曖昧になっていたDVD Audio対応についても簡単なテストを行ってみた。
前回の記事でもお伝えした通り、音質チューニングは、千葉にある「ソニーイーエムシーエス 木更津テック」HAビジネス部門商品設計部設計1課の統括係長、佐藤正規氏がプロジェクトのリーダーとして担当している。
佐藤氏は以前に書いたコラムで話を伺ったソニー・ホームオーディオカンパニー・コンポーネントオーディオ事業部AVエンターテイメント部商品設計1課シニアエレクトリカルエンジニアの金井隆氏の指導を得ながら、DA9000ESで得たノウハウと設計をDA7000ESに移植、チューニングを行っている。
佐藤氏は「TA-V777ES」で初めて音質チューニングを担当し、その後、海外向けAVアンプの音質調整で経験を積んだ後、「STR-VZ555ES」で国内モデルの音質チューニングに復帰した。「VZ555ES」は、金井氏も音質チューニングに参加したモデルである。
その佐藤氏が、9月以降にDA7000ESに施したチューニングは、大きく三つに分けることができる。ただし、あらかじめお伝えしておくが、チューニングポイントの具体的な内容については企業秘密とも関わる部分があり、紹介できない。あくまでも、“大まかな手法”であることをお断りしておく。
佐藤氏によると、デジタルアンプといえどもメカニカルなシャシーの強化は、音の質、キャラクターを決める上でもっとも重要な要素だという。
“音質”といえば、一般にはノイズや歪みなど特性面を思い浮かべるだろう。もちろん、そうした諸特性が良好であることを求められるのは、オーディオ機器として当然のことでもある。が、このクラスのオーディオ機器では“音の質”、つまりユーザーの感性どのように訴えかけるか? といったエモーショナルな部分の方が、よほど製品としての善し悪しに影響する。“品質がいい”のは当たり前の世界だからだ。
DA7000ESは、上位機種よりも高精度な演算を行えるデジタルアンプの心臓部を奢られているが、それでも初回の視聴時にはその良さをあまり実感できなかった(悪くはないが、価格クラス相当品プラスアルファ程度の印象だった)。その理由は、基本骨格や特性上の音はDA9000ESと類似、あるいは部分的に超えていても、感性に訴える部分での調整が行われていなかったからだろう。
佐藤氏は「実は、メカニカルな変化に対する感度は、アナログアンプよりもデジタルアンプの方が敏感です。しかし、DA7000ESはDA9000ESほど凝った、強固なシャシーを採用することはできません。DA9000ESでは鉄板が分厚いため、骨格部分を折り曲げ加工で、底板はくり抜き加工で作りますが、この手法は行程が複雑でDA7000ESクラスの製品では使えません。そこでプレス加工とパンチング加工で、どこまで剛性の高いシャシーを作れるかがポイントになります」と話す。
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