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ほんとなの?――次世代光ディスク統一規格報道の「真相」(2/2 ページ)

» 2005年04月21日 15時31分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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報道のきっかけは「藤井・久夛良木会談」? ――統一規格策定の可能性

 ではなぜこのタイミングで報道されたのか。

 前述のように継続して統一への取り組みが途絶えていなかったのは関係者の間では周知されていた。よってこの時点での新しい展開が存在するわけではないようだ。しかし、「東芝デジタルメディアネットワーク社・社長の藤井美英氏と、ソニーグループ役員の久夛良木健氏が会談していることが判明したことをきっかけに報道された」……との確度の高い情報がある。

 藤井氏は現職に就く直前、東芝の半導体部門を統括しており、久夛良木氏が率いるソニー・コンピュータ・エンターテインメントが次世代ゲーム機で採用するCELLプロセッサの開発で協力していた間柄だ。

 そのCELLとBD-ROMドライブを用いる次世代プレイステーションはこの5月に正式発表されることになっており、それを前にして統一規格に向けた話し合いが行われたと“推測された”のが、今回の報道の発端というわけだ。統一規格に向けた提携という今回の報道で、松下電器が登場しない理由も、こうした経緯があるためだろう。

 もっとも冷静に見てみると、次世代プレイステーションの発表を前に、半導体開発では盟友である両者が会談することには何ら不思議はない。藤井・久夛良木会談の内容は明らかになってはいないが、技術的な切り口で見ると「統一規格への糸口は見えているようで、なかなか掴みきれない」といったところが現実のようだ。

 光ディスク関連の学会では現在、青紫レーザーダイオードを用いた第3世代光ディスクに関連する発表はほとんどなく、第4世代と言われるホログラムディスクの技術発表が中心になっている。しかし、その中のいくつかは第3世代でも応用できるものがある。

 BD陣営の技術者は、現行BDのカバー層0.1ミリを維持したまま、信号処理などを一歩前に進めた3.1世代の提案を東芝に対して行っているようだ。物理構造や2層を超える多層記録などのBDの特徴はそのままに、信号処理などの部分で東芝がより納得しやすい形での提案となっていると思われる。

 一方の東芝は、製造面でDVDとの互換性が高いHD DVDの0.6ミリカバー層へのこだわりを捨てておらず、HD DVDの物理構造はそのままに、BDの技術を取り込む形での決着を提案している。この基本的な物理構造に対する考え方の溝は埋まっていないが、現行BDよりも進んだものになるのであれば、そちらに進むべきとの意見も東芝内にはあるにはあるようだ。

 ただし現時点の状況では、0.6ミリと0.1ミリの両互換という方向には向かっていない。同じ波長の光で異なるカバー層のディスクをサポートするためには、レーザーピックアップの構造を複雑化する必要があるためだ。

 統一規格への話し合いが継続されていることは間違いないが、現時点で何らかの具体的な進展があるわけではない。ただし統一に向けて周囲の圧力が強まっていることは間違いないだろう。ハリウッドの映画スタジオの何社かは、この1〜2カ月で統一規格への要望を強めてきている。

 年末と発表されているHD DVD製品の立ち上げが近づくにつれ、真贋入り交じり、今後も同様の報道が何度か繰り返されていくだろう。

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