机の上に紅茶の缶がおいてある。しばらく見ていると、それがいきなり“ずずずっ”と動き出すのだ。
「なんで動いているんですか?」
「こびとさんです」
というわけで、この缶はこびとさんが押しているのだ。わきには小さなディスプレイがあって、そこには実画像と一緒にこびとさん(3人いる)も映っているのだ。このこびとさんがかわいい。一生懸命うんしょうんしょと押しているのだ。こっちが缶を押し返すと、もっとがんばって押すのだけど、そのうち負けて後ろ向きにひっくり返ってじたばたする。かわいいよぉ。
見ていて思ったのだけど、2年前だったら、こびとさんを表示するのにヘッドマウンテッドディスプレイ(HMD)を使って、Mixed Realityをしたと思うのだ。でも、そうしちゃたら、たぶんかわいくない。この展示では、小さなディスプレイを見たあと、本物の(生の)缶の風景を見ると、そこにこびとさんがいるのが感じられるようになるのだ。この、Virtualな風景とRealな風景を行ったり来たりするってのがHMDでは大げさになる。
そうなのだ。HMDは大げさなのだ。こびとさんを表示しているディスプレイは、木枠を貼付けたりすることで、メカっぽさを一生懸命消そうとして、日常の中のVRを実現しようとしている(これは、さっきのゴブリンもそう)。HMDではそうはいかない。どうしても構えてしまう。
かつては夢の世界への入り口アイテムだったHMDが、いまでは現実とVirtualを仕切る壁に感じられるようになってしまった。VRの文化は、ここまで成熟したのだ。
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